k-takahashi's blog

個人雑記用

軍事研究 2014年3月号

軍事研究 2014年 03月号 [雑誌]

軍事研究 2014年 03月号 [雑誌]

派遣海賊対処行動航空隊第13次隊司令に聞く(山形文則)

ソマリア海賊による負担増は年に世界で180億ドルとされているが、その海賊対策として派遣されている山形一佐のインタビュー。
海自のP-3Cについての質問が中心。海賊と潜水艦の違い、ジブチの暮らしなどを語っている。

進化する日本の弾道ミサイル防衛(能勢伸之)

昨年12月に政府が発表した「国家安全保障戦略」「新大綱」「新中期防」をもとにして、弾道ミサイル防衛の今後の展開について解説。
米海軍のイージス駆逐艦はベースライン9MCでMMSPを装備できる。これは2つのビームを同時に出す機能で、これにより弾道ミサイル防衛と対空戦闘(AAW)が同時に実施できる。あたご型の改修ではここには届かないようだ。
またこんごう型の能力向上については、改造量が多くなってしまうため、新造艦にした場合と比較ということになる。
来年度予算にシミュレーション予算が組み込まれている。これの結果で当面の日本が必要とするBMD能力が決まるので、要注目。
また、中国の巡航ミサイルの脅威が増加しているが、新中期防にも戦闘機やPAC-3MSEによる対応が書かれている。

新防衛大綱の「統合機動防衛力」構想(田村尚也)

新大綱の解説。今年から、外交等の安全保障政策全体は「国家安全保障戦略」で示すので、大綱は防衛に集中することになる。
22大綱と比較すると、北朝鮮は「不安定要因」から「脅威」へ、中国は「危険な行為」「懸念」と書かれるようになった。
「ゲリコマ対処」の位置づけは低下。
陸自の配置・編成の変化は以前の予想より、大規模かつ急速。

尖閣の脅威に対抗する『E-X』(宮脇俊幸)

次期空中早期警戒機について。空自の警戒航空隊は、昨年創設30周年を迎えた。ミグ25事件は76年だが、空自での検討自体は60年代に始まっていたそうだ。
警戒機のアンテナには、ドーム型と直線型がある。直線型の場合は、主たる警戒監視方向が機体側方になるが、日本の場合は全周が必要。これが、他の国とは異なる日本の都合だが、E-Xにはその能力が必要となる。

米陸軍が誇る世界最大五千機のヘリ戦力(石川潤一)

米陸軍の航空戦力は、ほぼヘリ。ブラックホークUH-60)系が約2000機、アパッチ(AH-64)系が700機、チヌーク(CH-47)系が700機、この3つが中心。
なお、いずれも新型機の導入予定がロードマップにはないそうだ。
部隊リストが掲載されており、よく調べたなと感心する。

パシフィックリーチ(菊池雅之)

昨年開催された「西太平洋潜水艦救難訓練」演習「パシフィックリーチ」のレポート。
日本、アメリカ、韓国、シンガポール、オーストラリア、にベトナム、インド、ロシアが加わっての演習。
ただ、台風の影響で訓練内容が変更となり、横須賀の潜水医学実験隊での研修になったそうだ。(実験隊については、昨年の11月号に記事があった。)

ペルシャ湾掃海回想録(7)(落合蔲)

派遣も終盤。こぼれ話が幾つか紹介されている。
蝿が大量発生して、海幕に蠅叩きと蠅取紙を要求したら変な顔をされたとか、亀は機雷とよく似たソナー映像を映すとか、任務終了時期の提示が必要と判断したタイミングとか、ドバイは実はミネラルウォーターの輸出国だとか、砂袋用の砂を貰おうと思ったら「砂漠は国王のもの、勝手な持ち出しは御法度」と大変だったとか。

機関銃で処刑されたナンバー2(黒井文太郎)

12月に突如処刑された張成沢とその周辺についての解説記事。
本記事では、処刑を国家安全保衛部(秘密警察)と党組織指導部(党の筆頭部局)の主導とみている。クーデター策謀説については、「でっち上げでは無い可能性もある」という位置づけ。

プーチンの人事刷新で軍・国防省改革(小泉悠)

こちらは、ロシア軍人事、対外軍事関係、についてのまとめ。
カザフスタンへのS-300供与に合わせた声明で「米国、中国、欧州、NATOの脅威に対抗」としているのだそうだ。確かに中国がロシア主要部を攻撃しようとすると、カザフスタンを通ることになる。

捜索レーダー「シー・ジラフ」(多田智彦)

ロンドンで開催された防衛安全保障装備品の展示会「DSEI2013」のレポート。記事タイトルに出てくる「シー・ジラフ」は、スウェーデンのSAAB者の中距離レーダー。
日本企業も珍しく出展。富士通が、艦載用コンピュータ、大出力高周波半導体窒化ガリウム、赤外線センサーを出していた。

タイの爆発物処理トレーニングキャンプ(嘉納愛夏)

バンコクで行われた爆発物処理トレーニングキャンプ「レーベンス・チャレンジ」のレポート。
ちなみに参加費は無料で、費用の大半は協賛企業から出ている。実戦部隊に営業ができる場ということで採算はとれるという考えらしい。
唯一の日本人参加者である一志康洋氏。防爆スーツを着て「あのときにこれがあれば」とつぶやいたとか。やはり予算は大事。

中国の「防空識別区」設置宣言に見る誤解(井上孝司)

井上氏の連載(軍事作戦と情報処理)の第16回は、防空識別圏をまともに機能させるにはどんなことが必要か、という解説。脅威分析や識別、対応決定などが必要となる。さらにミサイル対応までまとめたのがJADGE。
なお、中国の宣言について井上氏は、

実際、空の上では過去に海南島事件という前例があるし、海の上でも米海軍のSURTASS船が中国側の嫌がらせを受けた事例がある。それをADIZという制度の下で明文化・正当化するのが今回の行動(p.241)

という説を書いている。