k-takahashi's blog

個人雑記用

Fの肖像

 フランケンシュタインネタでまとめたアンソロジー
フランケンシュタインストーリーの何処にスポットを当てるかで色々な切り口ができるんだな、と感心する。作った方から見るか、作られた方から見るか。できたばかりなのか、だいぶ立ったのか。周囲が認知しているのか、いないのか。などなど フランケンシュタインの花嫁ネタも幾つか。日本あり、海外あり。現代あり、未来あり、19世紀もあれば室町時代も。


 上田早夕里の「完全なる脳髄」の設定が面白かった。生物兵器による人類滅亡の危機とその危機への驚くべき対策から生まれたシム。ロボット(人造人間)テーマとしても面白かった。


 笑ったのは、「ショグゴス」(小林泰三)。タイトルから分かるとおりのショゴスねた。クトゥルー神話の設定ではショゴスは古のものによって作られた人造生物であり、その後反乱を起こすわけだから、フランケンシュタインねたにはぴったりだが、大統領という狂言回し越しに語られるストーリーは一捻りしたオチがついていて笑えた。まあ、確かにその通りだ、と。


 読み進めていて、色々な捉え方がある一方で、一つくらいハッピーエンドに持って行けないのかなと思っていたら、「光の栞」(瀬名秀明)がちゃんとそれをやってくれいていた。
栞とくれば本、壊れた本を修繕する職人が登場し、本を直す。装丁とかを作り直す部分はあるから、その作業は確かにフランケンシュタイン的である。主人公の女性は幹細胞の研究者だというところもそれらしい。そして、ちょっとネタバレになるが、その本は生きている本なのである。
でも、ちょっと描写を変えれば恐怖のホラーになる話が、ハートフルなSFになっている。アンソロジーなんだから、こういうのもないとね。