- 作者: 磯崎哲也
- 出版社/メーカー: 日本実業出版社
- 発売日: 2010/09/30
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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ベンチャーに資金が流れているということが広く伝わらない理由について、
世の中、「金が足りない」と思っている人はたくさんいますが、成功する人はあまりいません。
つまり、イケてないベンチャーが99%なわけです。ですから、「わたしはベンチャーにカネを出しますよ」といったことを言って、起業する人が大挙して押し寄せても、時間ばかりかかって実りはすくないわけです。(p.23)
金融機関が「困っているベンチャーにお金を出しますよ」などということを公言するのは、結果として効率の悪化や不良再建の増大をまねいてしまうわけです。(p.23)
ということで、カネはあるというのが著者の意見。ただ、ベンチャーのための「生態系」が手薄なのは事実で、ただそれは鶏と卵ではある。
それを受けて、ではどうすれば良いのか。もちろん「これをやれば成功する」なんて方法は分からないが、「これをやったらまずい」というのならある程度分かる。本書にはそういうまずいケースを避けるためには何をしておくかということが書かれている。
例えばストックオプション。例えば契約書、例えば現物出資、例えば共同経営者。資本政策など。こういったことについての最初のほんのちょっとの違いが、後で非常に大きく影響してくるというのが事実としてある。
問題は、ベンチャーが最もこの手の知識が無い状態なのは会社を設立する前後であるということ。一番クリティカルなところで一番知識がないのである。
だから、ちょっとしたアドバイスがあるのと無いのとでは、その後のベンチャー企業の将来が大きく変わってくるので、そこをおさえようということになる。
今のところ自分でベンチャーする予定はないのだけれど、こういう知識ってベンチャーを見るときとか、ベンチャーとつきあうときとか、あるいはベンチャーを助けますという政治家の言い分を判断したりするときとかに有用だと思う。そういう意味で、社会人は知っておくべきなんだろう。
一つ面白かったのが、計画のところ。
もちろん、事前に考えていた通りに進むことなんかないわけだが、それでもチェックしておくべきコトはある。
上場を目指すのか、バイアウトを目指すのか。上場するとしたら、どのくらいの規模のビジネスにするのか、バイアウトしてもらうためには、というのの相場観も書かれていた。本書によれば、上場の目安は5〜7年後に10億以上の利益が出る可能性があることだそうだ。
そして、それを前提にした資金計画をたてて、そのためにいつ頃どのくらいの資金が必要で、そのためには創業時に何をしておくべきか、そういったことの流れの「概要」が書かれている。
「ストックオプション」や「種類株式」などについても、そうったものがベースにあって初めて「どの手を使うか」という話になるわけ。