k-takahashi's blog

個人雑記用

ニュートン 2012年3月号

Newton (ニュートン) 2012年 03月号 [雑誌]

Newton (ニュートン) 2012年 03月号 [雑誌]

ヒッグス粒子

先月号で速報だった、ヒッグス粒子の詳報が8ページにわたって掲載されている。実験で得られたグラフと、それがどういうことを意味するのかの解説が丁寧で良い感じ。何を観測していて、それがどうなればいいのかとか、統計的分析の位置づけとかも一通り解説。

タイムマシン

特集のタイムマシンでは、カール・セーガン博士から相談を受けてワームホールを使ったタイムトラベルのアイデアを出したキップ・ソーン博士のインタビューが面白かった。

  • 私は確かに自由意志はあると感じています。これはとても深遠で、重要な問題です。しかし、私は科学者としてこの問いに答えるための”道具”をまだ手に入れていません。(p.60)
  • 宇宙でおこるあらゆる現象は、すべての物理法則に従う必要があります。ですから一般相対性理論でタイムマシンをつくれるという結論が出たとしても、一般相対性理論に加えて量子論の法則を当てはめると、答えが変わってくる、ということもありえます。(p.61)
  • タイムマシンが完成したときに、タイムマシンが自己はカイする可能性があることがわかりました。他の研究者や私自身のさらなる研究により、私は、タイムマシンが自己破壊するかどうかは、「量子重力の法則」によって決まる、と結論づけるにいたりました。(p.63)
  • 「強力な爆発によってタイムマシンが破壊されるかどうかは分からない」という点で意見が一致しました。 分からない理由は、爆発が強力になると、計算に使用する物理法則が破綻するからです。次にすべきことはわかっています。これまで使っていた法則を、いわゆる量子重力の法則と置き換えるのです。しかし、量子重力の法則はまだ十分解明されていません。(p.64)

色物かと思われるタイムマシン研究が、物理の最先端としっかり繋がっていることが分かるインタビューでした。

毎秒1兆コマのスローモーション撮影法

MITで開発されたカメラの紹介。1兆分の1秒だと光ですら0.3ミリしか進まない。だからこのカメラを使うと「光の進行」を捉えることができるのである。
凄いと思ったのが、物体に光が当たって反射するときの話。

半透明な物質であるトマトに光が当たると、内部で光が繰り返し散乱する。このため、トマトよりも遠くの壁に当たった光が見えている時刻でも、トマト表面の光はいまだ見えてこないのだ。(p.13)

この事実も面白いが、それが撮影できてしまうというところに感心した。

痛み

人が痛みを感じる理由の解説や、痛みの意味、止痛のメカニズムなど。


痛みの信号を受け取る痛覚神経が2種類あり(Aδ繊維:機械的刺激のみを受け取る。主に皮膚に分布し、伝達速度が速い、C繊維:色々な信号を受け取る。体中に分布し、伝達速度が遅い。)、受容する信号が異なる。痛覚神経は脊髄で感覚を伝える神経と情動を伝える神経とに情報を伝え、それらが大脳で処理される。
この処理が人によるため「他人の痛みは想像するしかない」となるのである。
また、痛覚神経の分布が一様でないため、腹痛で顕著だが、どこが痛いのか自分でも分からないことがあること、などが解説されている。


本来痛みはアラームであり無視してはいけないのだが、対応を行った後は我慢しない方がいいというのは知らなかった。痛みを放置すると慢性痛に進行することがあり、慢性痛の治療が困難であることから、対処した後はむしろ痛みを取り除く処置をとるべきなのだそうだ。
同様に「痛み止めを飲み続けると効かなくなる」というのも概ね間違いで、効かなくなるのは薬が間違っている(正しい薬を使っていない)可能性が高いのだそうだ(同じ痛みに感じても原因が異なれば薬も異なる)。だから、ちゃんと専門家に相談するべきだ、と。