k-takahashi's blog

個人雑記用

ネクロノミコン異聞 〜クトゥルー系架空戦記で萌えラノベ

ネクロノミコン異聞 (あくしずレーベル)

ネクロノミコン異聞 (あくしずレーベル)

きっかけになったのは、昨年の一月に私がブログに書いた冗談でした。当時の私は編集者として恋愛指南本企画のために世に出ている類書に片端から目を通している最中で、そのあまりにも荒唐無稽な内容のせいで正気度(サニティ)が低下。発狂寸前まで追い込まれていました。そこで、私が「恋愛指南本はクトゥルフ神話と似ている」とブログ上で愚痴をこぼしたところ、閲覧者の一人であるゲッターピジョンさんから「バイブルたる『ネクラロリコン』は無いのですか?(笑)」という返信をいただいたのです。それを読んだ私が「面白いから作ってみるか」と、三日間ほどで書き上げたのが『設定年表』でした。また、私はこの年表を元にブログで小説の執筆を開始しました。これが、オリジナルの『ネクロノミコン異聞』です(ブログ上でのみ公開)。
この小説は商業化を全く意図していなかったので、出版するには問題のありそうなアイデアが満載されていました。ところが、本書の監修者である松代守弘さんが年表と小説の一部をイカロス出版に持ち込んだところ、あっという間に出版化の話が進んでしまったのです。
(後書き、より)

という、戯れに設定年表を書いたら、なんか小説出版になってしまったという経緯らしい。


ポストデモンベイン時代に生きる我々にとって、神々が美少女なのはそれほど違和感がない。おまけに召喚された神々は契約者の理想の女性のイメージを取り、神々の方も契約者に気に入られることを望むという設定があるので、放って置いてもいちゃいちゃシーンが増えるという、かなり笑える話になっている。(契約者の一人が抽象画を描く芸術家だったので、その理想の女性の外見というのが、という辺りには吹き出した。(p.203))


一方、軍事面の方はシュトリヒ(ミル)を使った測距法の解説があったりする(p.133)など、随所にこだわりが見られる。時代背景的にはスターリングラード包囲線あたりなのだが、戦闘描写は意外と控えめ。神々の力をフルに発揮すると契約者の精神が崩壊してしまうので、使う力は慎重に制御しながらの戦いになるという設定のせいもあるかな。
この設定の辺りはなかなか興味深く、召喚のためには大量の犠牲者が必要だとか、普通の人は神々に接触するとその場で発狂してしまうので隔離して独立して運用しないといけないとか、契約者と神々は相互に依存関係にあるとか、契約者は徐々に精神を病んでいくとか、話が派手になりすぎないような制約がうまく作られている。


本書には既存のライトノベル架空戦記にはあまり見られない特徴があります。それは原オタク的な欲望、フェティシズムによって細分化していく創作物のジャンルを技巧、小説であれば文章技術で同定・再統合するという博物学的な欲望を具現化する試みがストレートに表現されている点です
(後書きより)

という辺りの評価は保留。比較できるほど他のラノベとか読んでいないので。