k-takahashi's blog

個人雑記用

インサート・コイン(ズ) 〜お前の頭がよくなってしまう前に

インサート・コイン(ズ)

インサート・コイン(ズ)

「マリオはジャンプをする時に片手を挙げるでしょう?」
どうしてだか知ってますか?
(p.6)


主人公は、ゲーム誌のライターをしている柵馬朋康。1979年生まれという設定。彼が、ゲームのデザインとゲームに関わる人たちの謎を追い求める様子を描いた短編集。
『穴へはキノコをおいかけて』ではスーパーマリオ、『残響ばよえ〜ん』ではぷよぷよ、『俺より強いヤツ』ではストII、『インサート・コイン(ズ)』ではシューティングゲーム、『そしてまわりこまれなかった』ではドラクエ、がそれぞれ扱われている。


各作品ともにゲームデザイン論を軽く絡ませつつ、人の行動の謎の理由を解き明かしていくというストーリー。このゲームデザイン論がなかなか巧妙で、それなりに筋は通っていて、本当かどうかはともかくそういう風に解釈できるし、それで納得いくだろう?といった感じに書かれている。

その「本当かどうかはともかく、納得いくだろう?」というのが、人の行動の理由が腑に落ちるというところにうまく繋がっている。特に「俺より強いヤツ」は「藪の中」風のストーリーで、その特徴がよく出ていると思う。ライター心得みたいなものが出てきたり、少年時代の女友達とゲームで対戦した思い出語りがあったりというところは、青春小説っぽくもある。田尻氏*1よりは少し年齢が下(作中に登場する流川先輩というのが、ほぼ田尻氏と同世代と思われる。)なところもなかなかうまい設定。と思ったら、著者の詠坂雄二が本当に79年生まれだった。


自殺した友人の謎の真相のところは、もちろん主人公の想像ではあるのだが、ちょっと背筋が寒くなった。嫌な感じにリアルだったので。


著者の詠坂雄二氏は一応推理作家ということなので、事件解決的なストーリーはお手の物なのだろうが、ゲームへの愛が溢れているところが良かったです。
ちょっとググってみたら、「異形コレクション Fの肖像」の「ドクターミンチにあいましょう」もこの人の作品だった。

補足 2012/03/31

 コメント欄で面白い考察を紹介して貰いました。「読了した方限定」で必読だと思います。
http://www.ne.jp/asahi/kaigo/aiai/p00_999_20120308.htm