k-takahashi's blog

個人雑記用

軍事研究2012年5月号

軍事研究 2012年 05月号 [雑誌]

軍事研究 2012年 05月号 [雑誌]

巻頭写真に南スーダンPKOの写真が数枚。この写真はのどかな様子。
あとは、2月上旬に神戸で行われた災害訓練のときの写真。驚くべきことに、「いせ」の入港の時に反対運動家がやってきて歓迎行事が行えなかったとか。そういう連中がまだいるのはともかく、歓迎行事が行えないってどういうことなんだか。


本文中には南スーダンPKOの記事もあった。取材記者(嘉納愛夏)が現金のことで頭を悩ませる(当然、キャッシュカードは使えない。その上偽札対策で受け取って貰えない札まであるそうだ)様子が興味深い。
ここでの自衛隊の活動はCIMIC(Civil Military Cooperation:民軍協力)と位置づけられている。まだ手探りの状態だが、

三府省(内閣府、外務省、防衛省)が一体となって、現地のJICAやNGOと連携、包括的にPKOに参加する。合言葉はオールジャパン。(p.46)

だそうです。

RQ-170

昨年12月、イランが米軍の偵察機を「捕獲」した事件の解説もあった。
『イラン、米軍の最新鋭無人機RQ-17Oをハイジャック』(阿部琢磨)の記事。
1999年にコソボでF-117が撃墜される事件があり、「ベガ31の教訓」と言われているそうだが、それを生かせずに、同じルートでの飛行を繰り返したあげく、ロシアの防衛システムで武装したイランにGPS信号を偽装した妨害電波を出されて乗っ取られてしまったということのようだ。

まず1L222で軍事用電波帯域に妨害をかけ、無人機が軍事信号から一般のGPS信号を受信するように仕向けた。次に脆弱なGPS信号経由で機体そのものをハイジャックし、本来RQ‐170が着陸するべき基地の地図座標を、イラン側に数十kmずらすことで自国領内に着陸させた。(p.91)

と記事には書かれている。


先日、北朝鮮GPS妨害電波を出していたが、裏で繋がっているのかもしれない。なにより、日本も今後無人偵察機を多用するようになるのだから、北朝鮮や中国、ロシアが類似の手口を使ってくる可能性は高く、人ごとではない。

プーチン政権の目指すスマートな国防(小泉悠)

なにやらやたら大規模なロシアの軍拡が紹介されている。10年間で20兆ルーブルという額の計画だが、小泉氏の分析によれば、かなりの程度は実行されるようだ。
ただ、もちろん懸念も幾つかある。面白い指摘の一つが軍人の処遇について。http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/35130 にも書かれているが、金だけでなく様々なインフラ的な点で対応が間に合わないらしい。

ソ連の有事動員軍事生産体制(宮園道明)

1920年代から第二次大戦にいたる、ソ連の軍事生産についての歴史記事。
著者は、現在の中国の民生企業も有事対応が組み込まれているかもしれないと指摘している。個人的にはそう簡単に類推はできないと思うが、どうなんだろう?

海兵隊の戦車

p.145に米国海兵隊が使ってきた歴代の戦車の写真が並んでいる。(ルノーM1917からエイブラムスまで)。色々やっていたんだねえ。

防護システム

『戦闘車両のためのアクティブ防護システム』(黒部明)は、車両防御システムの解説記事。RPGや砲弾に対抗するシステムで、反応装甲のさらに先に行って対応しようというもの。BMDと同じような考え方の多重防衛だが、反応時間はミリ秒単位というところが大きな違い。実用化が進みつつあるがまだ決定版的なものはないという状況らしい。(記事中では、AWISS、クイックキル、LEAD-150、トロフィー、AMAP ADS、zaslon、を紹介)
町中の治安任務時に使う場合は、対応によって周囲に被害を出さないようにしなくてはならないというのも難しい課題。


『ロケット弾や砲弾を撃ち落すC-RAMレーザー砲』(井上孝司)は、連載中のレーザー兵器の解説。
C-RAMは「対ロケット弾・砲弾・迫撃砲弾」のこと。こちらも色々あって、ファランクスの架台にレーザーを載せるなんてのもあるそうだ。
コンセプトはいいとして、実現のためには100kwを出すことが一つのマイルストーンになる。化学レーザーを使えば可能だが、これは有毒ガスを出すため、市街地では使えない。なので半導体レーザーとなるのだが、こちらはまだ出力不足。

その他

先月号には、ソ連の対西側諜報が猜疑心のためうまく機能しなかったということが書かれていたが、今月号は科学情報の収集の話が載っていた。(『KGBの西側科学技術奪取作戦』(橋本力))
これは相当程度うまくいっていたようだ。


『独立回復リトアニアの国防政策』(斎木伸生)は、氏のバルト三国レポートの一環。
歴史解説の中にあった

リトアニアでは、他のバルト諸国と違ってポーランド人という少数民族問題を抱えているからである。(p.233)

が興味深い(ポーランドファクターという言い方をしている)。そうだよな、歴史的にはポーランドって大国だったんだよね。

なお、三国の国防政策の違いについては、

エストニアがなんとしても「トータルディフェンスを維持し続ける」、ラトビアが「現代の軍隊ってどうせそんなもん(危機対応部隊)でしょう」と開き直っている(ちょっと失礼ですみません!)のにたいして、リトアニアの「トータルディフェンスも準備したいけどNATO部隊と両方は無理!」というスタンスは、前述したようにエストニアラトビアの折衷のようでなんともおもしろい。(p.239)

というふうに違いを示している。日本から見ると同じに見えるけれど、事情はそれぞれ、対応もそれぞれ。