k-takahashi's blog

個人雑記用

軍事研究 2015年10月号

軍事研究 2015年 10 月号 [雑誌]

軍事研究 2015年 10 月号 [雑誌]

陸上自衛隊『個人携行救急品』(清谷信一

清谷氏は、カタログ整理系の記事は上手なんだよなあ。
東日本震災を契機に自衛隊のファースト・エイド・キットの見直しが進んだが、まだまだ訓練にすら事欠くレベルとの指摘。
いざというときに民間備蓄を活用しようにも、そもそも銃器犯罪の少ない日本では戦闘外傷用の医療用品の在庫などほとんどないこと、現法制上グレーゾーン状態では野戦病院が開設できない(治療に制限がかかる)ことなど、課題が多い。


救急対応体制が整っていることも、また抑止力なのである。

ロシア初の本格的大型空母「シュトルム」(多田智彦)

軍拡著しいロシアだが、7月に「国際海洋防衛展示会」が開催された。そこに登場した展示・デモなどの紹介。
タイトルに出てくる「シュトルム」(10万トン、90機級の大型空母)は基本構想状態で、この船が造られるわけではない。
それにしても、中露の軍拡は凄い。

戦車王国ロシアが作った「無人砲塔戦車」(野木恵一)

こちらは新型戦車「アルマータ」の解説記事。
世界の戦車開発サイクルを説明し、そのサイクルから見ても「アルマータ」が新型であることを解説。
アルマータの砲塔が大きいのはセンサー類も搭載されているためで、乗員防護の点からは砲塔を無人にすればよいのであって、小型化自体が目的ではないということ。野木氏は将来的な152mm砲搭載(既に試作機はある)の可能性も指摘しており、それもふまえての大型砲塔なのかもしれない。

中国、ロシアと日米の2020年代空対空対決(宮脇俊幸)

こちらはロシアの空対空ミサイルについての記事。
当然、ロシアのミサイルは中国に流れるわけで、ロシアが開発中のRVV-BD(長射程空対空ミサイルの新型)を中国のSu-35を搭載し、空自のAWACSを狙う懸念が出てきている。
記事はロシアと日米の比較と、自衛隊の研究方向性の提言が書かれている。将来的にはF-2後継機用の長射程ミサイル、F-2後継機内装用の短射程ミサイル、などを薦めている。

米軍の次世代空対地ミサイル 第1回(石川潤一)

現行のフェルファイアとマベリックを代替する世代のミサイル解説記事。
メインがロッキードマーティンのJAGM(ヘルファイア改造型)。滑空誘導型のGBU-53/B(滑空距離 40海里)。他に威力の小さなものも開発されている(小型高精度のもの。SCALPELやハイドラ70)


多国籍PKO訓練「カーンクエスト15」(菊池雅之)

「カーンクエスト15」は、モンゴル・米国二国間合同軍事演習として2003年にスタート。これが多国間PKO訓練に変化し、27カ国が参加している。
こうしたPKO活動は新興国にとっては、参加するとお金が貰えるし、訓練もしてもらえる、世界の平和維持だけでなく自国への攻撃に対する抑止力にもなるという悪くない話(もちろん、軍を出すこと自体のリスクはある)。実際、カーンクエストには中国も参加しているが、中国から軍事圧力をかけられている国々(日本を含む)も参加している。また、自衛隊はインストラクターとして参加している。これも誤解を減らすという意味で有用。
PKOの準備をすること自体が抑止力になるということは、国内のあちら系の人には考えたくもない事実だろう。実際、パトロール中に攻撃を受け、後方のモンゴル軍が応援にかけつけるというシーンがあったのだが、そういうPKOではありえる話を日本のTV記者達は「自衛隊が襲撃された理由」を聞きだそうとしていたようだ。(訓練だから、という当たり前の解説にしかならないのだが)

上海長江三角州の濃密な中国航空戦力(田中三郎)

人民解放軍の最新鋭戦闘機Su-30、大型爆撃機H-6が上海長江三角州に増強されている件の解説。台湾侵略用で、機体だけでなく基地・指揮系統も強化されている。それを写真や地図で解説。

同じ領域を共有する仲間になれるか?無人ヴィークル(井上孝司)

無人機連載の9回目。今回は衝突回避の話。
特に有人機が混在した場合、既存のシステムと混在した場合がやっかい。更に軍事活動中の場合は『前方にいる仲間の車両が敵の攻撃によって破壊されたり擱座させられたりして、突如として「追送すべき対象」から「障害物に化ける場面が考えられる』(p.115)といったことも考えないといけない。

空幕防衛部長『ソ連崩壊と米の対日懸念』(鈴木昭雄)

連載18回目。御巣鷹山の回想では、「夜が明けて遭難現場の上空には、捜索救助活動および取材活動のための航空機が多数集中し、錯綜」(p.149)というのが興味深い。言われてみればその通り。でYS-11を統制機として配備。こうした管制はこれが初めての試みだったそうだ。

中距離核戦力に包囲されるロシア(小泉悠)

INF問題の歴史と現状の解説。米ロ双方が相手の条約違反を非難する現状。80年代も反核運動の名目で反米運動が行われたが、今回も政治絡み。
ロシアの言い分は、米ロ以外の国が規制対象にならずに核ミサイルを保有しロシアを脅かしているというのだが、なぜか中国を除外しつつ米国のMDを批判するという妙な状態。

機外ポッド、戦闘力をアップグレード(青木謙知)

現在の軍用機には必須の「機外装備品」(ポッド)。その代表的な機材を題材に歴史と役割を解説。

記事では、コンベアB-58(1956年)を嚆矢としている。爆撃倉、燃料タンク、偵察機材などをポッドとして設置することで、長距離核攻撃を含む様々な任務をこなしつつ航空機としての性能を維持するということを実現した。
空自はF-4EJ用の偵察ポッドを開発(1981年〜)している。
米軍はベトナム戦争でF-4用の機銃ポッド(ファントムには固定機銃がない)を開発している。これについては「目視確認」という交戦規定のせいだと言われているが、実際には当時のミサイルの性能では相手を落としきれず、結局接近戦は起こるというのが現実だったようだ。
F-35では海軍・海兵隊は固定機銃を求めず、これもポッドで対応する。
F-15Eは様々な追加機能をほぼポッドで実現している。これがイーグルの長寿命化に貢献しているのだろう。