- 作者: 結城浩
- 出版社/メーカー: SBクリエイティブ
- 発売日: 2012/05/30
- メディア: 単行本
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表紙はガールズのみなさまの浴衣姿。内容自体も夏休み期間中が舞台となっており、おそらく結城先生は7月頃の発売を想定していたのかな、と思った。
私がリアル高校生だった頃に、サークル(SF研)の友人が嬉々として群とか体とか環とかの話を語っていたのを思い出しながら読みました。大学の教養課程の数学でも同じような話を聞いたはずなのですが、彼が(残念ながら男性でした)嬉しげに語る様子の印象の方が強く、今でも憶えている。
誰でも知っている「二次方程式の解の公式」の話から始まるのかな、と思いきや、あみだくじの話から始まっていた。当然、最後まで繋がる伏線なのだけれど、結城先生はこの話題はどうやって思いついたのだろう。
以前、数学ガールの3巻を読んだときに
第10章は途中で挫折。いや、字面を追うくらいならできますが、ゲーデルの原論文の流れにほぼそのまま沿った論証の進め方だったので、びっくり。
数学ガール ゲーデルの不完全性定理 〜形式のもつ力と意義 - k-takahashi’s 雑記
という感想を持ち、このときは「さすがに原論文はしんどいな」と思ったのですが、本書は、ガロアの原論文をきっちりとこれでもかとばかりに丁寧に解説してくれています。本書全体がこの部分に向けて組み上げられており、このまとめかたは凄いと感心しました。
「ガロアの原論文は難しいのでは?」とテトラちゃんに尋ねられたミルカさんが応えて曰く。
「確かに難しい」とミルカさんは認める。「でも、現代に生きる私たちには既に整理された数学の言葉がある。それを使えば、ガロアが第一論文で行っている主張を理解するのはさほど難しくない」
(p.355)
その言葉が、1章から9章までで(上述の、あみだくじ、も含む)説明されている。最後まで付いていける度では、シリーズ中一番かなと思う。(個人的には4巻が一番だけれど、これは商売道具に近いというのがあるので、ちょと別格)
ガロアの人生
本書中でも触れられているが、ガロアという人は壮絶な人生を送った人で、15歳で留年したとき数学に目覚め、論文を提出するが採択されないまま、20歳で決闘で死んでいる。死の前日の晩にも論文の推敲を行っていたという逸話が残っている。その論文が「第一論文」と呼ばれている。
こういう人生を送った人物について10代の若者に語るのには色々気を使う必要があると思うけれど、本書中でもミルカさんがユーリの軽口をたしなめるシーンが描かれている。
(テトラちゃんがバトルっぽいことに言及するシーンが幾つかあったので、この役目はテトラちゃんかと思っていたらユーリだったので、ちょっと意外だった。)
覚え書き
「添加」。
2章からこの言葉が出てくるのだけれど、非常に腑に落ちた。この部分大事なので、とても助かった。
不変なものには名前を付ける価値がある。(p.213)
物理学の世界だと「保存則」に対応する。
構造を見抜いた証拠として文字を使うんです!(p.240)
三次方程式の解の公式を導く過程での台詞。ラグランジュ・リゾルベントが出てくるシーンから。
せっかく、Qに(3√)2 を添加しても、そこには (3√)2 ω も (3√)2 ω^2 もいません。あたし、何だかひとりぼっちになった (3√)2 みたいで、(p.335)
青春の悩みを数学で表現するのかと思って読み流していたら、しっかり解説の伏線でした。