k-takahashi's blog

個人雑記用

会社を変える分析の力 〜ビジネスに使うならビジネスの視点は必須

会社を変える分析の力 (講談社現代新書)

会社を変える分析の力 (講談社現代新書)

最近流行の「データサイエンティスト」関連の一冊。
但し本書は徹頭徹尾「ビジネスに使う」ことを意識している。タイトルも、より正確に言えば「会社を変えるための分析に必要な力」とでもなるだろうか。
それをできるだけリアルっぽい形で説明している。本書内では、仮想アイスクリーム屋が原料の仕入れ量を決めるという例を使って、「実際にビジネスとして結果に結びつける」ことを解説している。


ただ分析するだけではだめ。狭義の意味での「分析の専門家」にも価値はあるだろうが、それでは誰も幸せになれないことがある。
開発案件でもよくあることだけれど、最初の要求が真の要求でないことはこの世界でも珍しくない。そんなときに言われた問題をそのまま解こうとしても、解けないことが多い(そもそも問題設定が間違っていたり、非現実的な前提があったりするから)。でも、ビジネスの視点で問題を捉え直せば解決が見つかることもある。そういう開発案件での「上流工程」に相当するところまで手を出すべきだ、というのが著者の主張。

もしあなたがデータ分析でビジネスを変革していこうと考えるならば、あなた自身が「見つける力」「解く力」「使わせる力」の三つの力を身につけ、第一幕から第三幕までの主人公を務める気概を持ってもらいたい。(No.815)

本当にそうするかどうかは、現実的には色々あるだろうが、ひとつの理想型としてはそうあるべきだということ。これが本書の一番重要な主張。


なので、こんなことも書いてある。

仮に期待通りの分析結果が得られるとして、その場合ですらサクセスストーリーを描けないようでは、データ分析をやる前から無駄に終わることはわかっているのです。(No.953)

データ分析が成功するには、四つの壁を乗り越えなければなりません。一つ目の壁は「データの壁」、二つ目の壁は「分析の壁」、三つ目の壁は「KKDの壁」、四つ目の壁は「費用対効果の壁」です。(No.953)

サクセスストーリーというのは分析が上手くいったとして、それでビジネスがどのように改善していくかの流れのこと。これが書けないようならだめだということであり、またストーリー実現の妨げになるのが上記の2〜4の壁ということになる。
と聞けば、ある程度ビジネスの心得のある人なら大体内容は予想できるだろうし、それで多分正しい。もちろん、本書にはそこがブレークダウンして書かれているが、実のところいわゆるコンサルと大きな違いはない。もっといえば、研究開発に携わる人間にとっても似たようなもの。そういう意味では、研究所とかで「データサイエンス」とか言っている人は、本書の内容を理解しておく必要がある。


ということで、「データサイエンティスト」に過剰な夢を見ないために、「データサイエンティスト」として活躍するために、どちらの側にとっても心得ておくべきことが書いてある。
分量は多くないし、値段も安いし、それほど読むのも大変ではないので、感心があるなら読んでおくとよいと思う。