- 出版社/メーカー: ジャパンミリタリーレビュー
- 発売日: 2013/11/09
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「機動戦闘車」を解剖する(竹内修)
10月9日に公開された機動戦闘車についての解説。
重量26トンについては、XC-2の貨物搭載量約30トンとは符合している。(が、XC-2の貨物搭載量が25トンとの報道もある)
従来の陸自の装輪式装甲車は道交法の制限によって全幅2.5メートルいないだったが、今回は約3メートルとなった。これは今後も続くかどうか。
航続距離については、陸自の国産戦車が他国の同規模戦車に比べて短いことが多かったが今回もそうではないか、だとすると800キロよりやや短い程度と推測される。
エンジンを前部に置いているが、これは改造型を除くと珍しい配置。後部スペースに隊員を収容するためではないか、と著者は推測している。
中国海洋進出の「天空一体戦略」(田中三郎)
第二世代「北斗」の軍事サービスについても記載があり、中国製のGPS測位兵器には、全て二重モデル(北斗対応)があり、これら誘導精密攻撃武器をパキスタンなどへ輸出する動きが活発化すると予想。
また、「遙感」衛星システム(画像レーダー衛星)は、軍事衛星だが、対外的には非軍事アプリケーションの仮面をかぶっている。
また、有人ステーション開発を隠れ蓑にして対衛星攻撃ミサイルの研究をする可能性が極めて高い、との認識。
繰り返す北朝鮮危機とイラク攻撃(福好昌治)
冷戦終結から現代に到るまでの米統合軍の作戦活動についてのまとめ記事。今回は湾岸から911前まで。
湾岸戦争の頃はまだ第5艦隊がなく、第7艦隊がペルシャ湾担当だった、とあり、ああそう言えば、と思った。
記事中には、湾岸戦争、北朝鮮核問題、台湾海峡危機、クルド人保護、カンボジア紛争、イラク査察問題(97年)、インドネシア問題、イラク査察問題(98年)。実際に武力を行使したかどうかはともかく、きちんと準備してにらみを利かせている。
戦場における勇気を称える「最高勲章」(永井忠弘)
大戦後の、「戦場での勇気に対する最高勲章」の解説。
アメリカの「名誉勲章」(Medal of Honor)は、米軍人向けとして唯一首からかける勲章。受賞者の特典の一つが、階級が上であっても先に敬礼するというのがあるそうだ。ベトナム戦争では、特殊部隊とヘリ乗員が多いとか、湾岸戦争では受賞者はいないとか、色々特色が出ている。
イスラエルの「武勇勲章」は黄色いリボン付き、これはゲットーで差別されていた頃に黄色いダビデの星を付けさせられていたことからだそうだ。こちらは、六日戦争で12名受賞となっていて、この戦争が決して楽な戦争ではなかったことを反映している。(一般には、六日戦争はイスラエルの圧勝とされているが)
米陸軍の状況判断思考過程「MDMP」(木元寛明)
いかにも米軍らしい、「部隊指揮における状況判断プロセスの知識共有化」についての記事。
任務を受けたら、まず時間配分を決める(大隊長が3分の1の時間で準備し、3分の2は中隊長に時間を渡せ。中隊長は3分の1で準備し、3分の2は小隊長に。以下、繰り返し)とか、図上演習について具体的に実施要領が決まっているとか、いかにも米軍っぽい。
この手続き全体が、なんかシミュレーションゲームとか、更には非軍事意志決定プロセスとかにも参考になりそうなもので、面白い。
初開催!「日英安全保障協力会議」(黒井文太郎)
9月30日、10月1日に開催された初の「日英安全保障協力会議」についてのレポート。今後日英はどのように協力していくべきかという議論をしていたようだ。
「日英安全保障協力の将来」(まずは、情報共有の仕組みの構築)、「アジア太平洋地域の海洋安全保障と日英協力」、「日英防衛装備強力のあり方」、「新たな脅威と日英協力」の4セッション構成。
米国をどう補っていくかという将来の話もあるが、差し迫った話として装備の共同開発とサイバー防衛が取り上げられていたそうだ。
巡航ミサイルに無防備なグァム基地&THAADの限界(軍事情報研究会)
中国がH-6K爆撃機に巡航ミサイルCJ-20を搭載すると、グアムが中国の攻撃圏内に入ってしまう、これに関連した記事。
グアムの米軍基地は、台湾、朝鮮半島、南シナ海、尖閣諸島などでの有事の際、最前線を後ろから支える前進基地として機能する。実際、グアムの第36航空団には飛行隊は一つも無いが、支援能力は非常に充実している。今、中国が防空識別圏という口実で領空拡大を目論んだことが問題になっているが、これに対して米軍がB-52を飛ばして対抗したが、この基地がグアム。
中国からすれば侵略の邪魔になるから、ここを攻撃したくなる、と。
現状、この巡航ミサイルへの対応力は不充分だが、米軍はJLENSという空中警戒レーダーの研究中でこれが配備されれば早期警戒力は高まるそうだ。
モサドを「裏切った」二重スパイXの悲劇(鈴木基也)
ベン・ジーガーという二重スパイについての小文。
中に、モサドの心理試験というのがあり、面白かったので、引用。
受験者の目の前に、円を描いた板がある。ここで彼らは筆記具を手に持ち「目を閉じて、円の中心と思った場所に印をつけよ」との命令を受ける。その後で、受験者全員が嘘発見器にかけられる。(p.190)
さて、これでどういう結果だと評価が高いのだろうか? 記事によれば、「いんちきをした(こっそり薄目を開けていた)おかげで円の中心に点を打つことができたうえに、嘘発見器にばれずに済んだもの」が評価が高く、ごまかしがばれた者の評価が低いのだそうだ。更に、なんであれ、嘘発見器に反応しなかった者が高評価、なんであれ嘘発見器に引っかかったものが低評価とのこと。なるほど。
ロシア軍秋期大演習「ザーパド2013」(小泉悠)
冷戦型(対西側を意識した演習)か、テロ対策型か、ということで注目されていた今年のロシアの大規模軍事演習「ザーバド2013」。例によって詳細が公開されているわけではないのだが、著者の分析によれば、小規模紛争を念頭に置いた軍事態勢作り(セルジュコフ改革)という方向性は維持されたようだ。
一方で、同時期に開催されたCSTOの演習では、「平和維持任務」のようでありながら、実際には、停戦監視や戦後秩序構築ではなく、反政府活動鎮圧が中心だった模様。こちらは、反西側のトーン。