Hooked ハマるしかけ 使われつづけるサービスを生み出す[心理学]×[デザイン]の新ルール
- 作者: Nir Eyal,Ryan Hoover
- 出版社/メーカー: 翔泳社
- 発売日: 2014/05/27
- メディア: Kindle版
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著者が提唱する "Hooked"モデルというのがあり、それは、「Trigger(きっかけ)」「Action(行動)」「Variable Reward(報酬)」「Investment(投資)」の4ステップから構成されており、「投資」したことが次の行動の「きっかけ」につながるループになっている。(ユーザに投資させることで、つぎのきっかけ(思い出し)を促す、みたいなループ)
もちろん、ユーザが抱えている問題を何らかの形で解決することは必須である(報酬)だが、それをこのサイクルに落とし込んで習慣化させることができれば、サービス提供者としては大きな利益が得られるということ。
この4ステップを具体的に説明しているし、チェックリストもついている(確認項目と、今すぐやってみるべきこととの両方が掲載されている)ので、コンシューマ向けサービスを考えている人は、このリストのためだけに買っても良いと思う。
もちろん、このサイクルは「一旦はまったものから抜け出すのが難しい」→「新規サービスを浸透させるのは困難」ということも意味している。習慣を抜けること自体が「痛み」(本書では「痒み」と表現している)を伴うからだ。
中国が海外のサービスの締め出しに成功しているのは、各ステップを強制的に切断しているから、といった視点で考えることもできるだろう。
本書のアドバイスは具体的である。例えば
モチベーションと能力という二者のうち、どちらを先に増やすべきか?どちらにお金と労力を投資すべきだろうか?
(No.1297)
については「常に能力である」(No.1302)と明言している。
また「報酬」のところに "Variable"とあるのも面白い。
これは報酬が「予測不能」という意味で、つまりどのくらいの報酬があるのか分からない方が、習慣化に繋がるということ。一般のビジネスロジックには逆行するような話だが、例えばFacebookの「いいね」。これは報酬だが、どのくらいつくかは分からない、何の保証も無い。だから人はハマるのだ、というのが本書の主張。
最後の例が「聖書アプリ」というのが面白い。多くの日本人にとってはなんの感慨も感じないアプリだろうが、それだけにある意味で冷静に本書のモデルの説明例として見ることができる。
ウェブサービスやスマホアプリのアイディアを出すための本ではなく、アイディアが出て、それをアルファレベルまで作ったところで、どう仕上げていくかというときに読むべき本なのだろうと思う。その意味では、「机の上の置いておく」本かな。