カフェ・プリムヴェール: 五年間の月報から見るメイド喫茶経営の裏側
- 作者: 宇佐照広
- 出版社/メーカー: BLUEGALE
- 発売日: 2015/06/09
- メディア: Kindle版
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2003年2月、札幌に出来たメイド喫茶「カフェ・プリムヴェール」は東京、名古屋に続いて全国でも3番目という早さでした。
http://www.amazon.co.jp/%E3%82%AB%E3%83%95%E3%82%A7%E3%83%BB%E3%83%97%E3%83%AA%E3%83%A0%E3%83%B4%E3%82%A7%E3%83%BC%E3%83%AB-%E4%BA%94%E5%B9%B4%E9%96%93%E3%81%AE%E6%9C%88%E5%A0%B1%E3%81%8B%E3%82%89%E8%A6%8B%E3%82%8B%E3%83%A1%E3%82%A4%E3%83%89%E5%96%AB%E8%8C%B6%E7%B5%8C%E5%96%B6%E3%81%AE%E8%A3%8F%E5%81%B4-%E5%AE%87%E4%BD%90%E7%85%A7%E5%BA%83-ebook/dp/B00ZCF6LRE
見た目だけではない確かな味とメイド達のおもてなしを求めて、全国からプリムヴェールへと通う強者達が次々に現れます。
その後メイド喫茶は一大ブームとなり、「おかえりなさいませ!ご主人様」というキャッチコピーと共に全国各地に出来、テレビ、新聞、雑誌等で次々に取り上げられる存在となりました。
20人も入れば満杯となってしまう、街角の小さな喫茶店プリムヴェールにもその波は容赦なく押し寄せてきます。
メイド喫茶のオーナーとなった著者が、その波にどう乗り、翻弄され、結果どうなったのか・・・
2007年12月に閉店するまでの5年間に起こった出来事を1円・1人単位まで書き留めていた売り上げ、入店者月報と共に公開し、メイド喫茶ブームの裏で何が起こっていたのかを明らかにします。
プリムヴェールに通った人には懐かしく、また当時のブームがいったい何だったのかを考察する人には貴重な資料となる事でしょう。
へえ、メイド喫茶の経営記録か、と思って読んでみたら、喫茶店経営は大変ですという話だった。
もちろん、メイド喫茶ならではの苦労というのもあって、ブームで一時的に増えた客がメイド萌えを過剰に持ち込んで固定客を追い出す結果になってしまったとか、店のマスターがメイドを彼女扱いして連れ歩いているのが暴露されたりとか(そのごたごたで何人かまとめてスタッフが辞めてしまい大変だったとか)もある。
でもそれ以上に、日銭を稼ぐビジネスの苦労が色々と書いてあって、定休日を作るのが負担だったり、季節変動を抑えるために色々イベントをやったりという話がたくさん。スタッフ集め(メイドさんの採用基準)、開店準備、調理器具の調達とメニュー開発、スタッフのきりもりなど、まあ読んでいるだけで大変さが伝わってくる。
メイド喫茶という長所(客単価がはっきり高かったそうです。普通の喫茶店は500円くらいのところ、700〜800円だったとか)を活かすには集客数を増やすのが大事だからという方向で宣伝戦略も立てたりしている。
圧巻なのは日ごとに売り上げが全部掲載されているところ。これが上述の日銭ビジネスの苦労をはっきりと表している。喫茶店経営に変な夢を見ている人とかは必読でしょう。
飲食店経験者で数字の分かる人なら、札幌でこの規模の喫茶店を始めても、赤字を作るだけだなというのがまず見えると思います。
その後も、メイド喫茶は札幌に次々とできますが、今も残っているのは夜をメインにして、お酒を出し、チャージ料金設定をしているお店だけです。
チャージを取らずに、飲食代だけで回すというだけでは、かかる人件費をまかなうことができません。
(No.499)
月平均の経費が200万弱。売り上げはなかなか200万を超さず、低迷から抜け出せる目処が立たなかったこともあって閉店を決断する。
本業(パソコンゲーム開発らしい)の儲けをつぎ込んだ、まあ道楽みたいなものだったようだけれど(遊びではない。本当に真面目に経営に取り組んでいる)、貴重な記録だと思う。凄く興味深く読めた。
プリムヴェールをスタートして一番後悔したのが、メイド喫茶の”オーナー”にはなりましたが、”ご主人様”ではなかったということですね。
メイド達の笑顔はご主人様に向けてのもので、オーナーはその笑顔を保てるようにする管理者だった。
(No.504)
お店の記録が、http://tabelog.com/hokkaido/A0101/A010103/1003496/ にちょっと残ってますね。美味しい喫茶店だったようです。