k-takahashi's blog

個人雑記用

軍事研究 2013年10月号

軍事研究 2013年 10月号 [雑誌]

軍事研究 2013年 10月号 [雑誌]

表紙は新型DDH「いずも」。
巻頭写真には、アメリカの強襲揚陸艦アメリカ」。どちらも、シルエットは空母っぽい。

マルチロールファイター”F-2”の進化(宮脇俊幸)

F-2戦闘機の能力向上について。2000年に配備開始し、2000年代後半、2010年代半ば、2020年代初頭、と4つに区切って解説している。
初期は運用要求のひとつであった空対艦ミサイル4発。これはASM-1、ASM-2で実現。
2000年代後半は、夜間低高度航法能力と精密爆撃能力の向上。加えて空中給油機との適合性確認。
2010年代半ばは、アクティブレーダー誘導方式ミサイルの戦力化として、AAM-4を搭載。加えて戦術データリンクを充実。F-2には国産開発のJDCSを開発中。これは大きさを自分で設計できるのでトータルの改修規模を小さくできるというメリットがある。性能的にもリンク16より上(ネットワークへの加入・離脱が随意・容易、とのこと)
2020年代初頭は、空対地、対艦能力の向上が検討されている。
そのあとの見込みとしては、HMDやIRST(赤外線捜索追尾装置)が予定されており、将来機向けに開発中の技術もF-2に先行適用を検討している。

輸出なるか!? US-2&防衛省開発航空機(小林春彦)

5月のインドとの首脳会談で、US-2救難機の導入検討が盛り込まれたが、実のところどうなのかという解説記事。
US-2を輸出する場合、パイロットの教育なども必要で、民間機とは言え自衛隊の支援は不可欠。
C-2やP-1などもそれなりに優秀な機体だが、これらの自衛隊機には

市場は比較的「ニッチ」な特性ゆえに競争相手が少ない反面、市場規模が限られている。それゆえ、通常の民間航空機としてこの二機種の輸出活動を続けることは、費用対効果の観点から一定の限界があり、(p.47)

という課題がある。つまり、市場に自衛隊の要求に適う適当な機体がないから自主開発をするわけで、当然その市場はニッチにならざるをえない、というわけだ。


また、著者は、記事の末尾で

防衛省の最近の装備行政は、防衛(航空機)生産・技術基盤の維持よりも、経済性と公正性を重視して競争入札固執するあまり、産業界の実情や運用者側の要望からかけ離れていく傾向にあるようだ。(p.49)

と苦言を呈している。

陸上自衛隊第7師団第7後方支援連隊(芦川淳)

後方支援部隊の取材を狙っていた著者が、日本唯一の機甲師団の後方支援連隊の大規模訓練の取材というチャンスを得る。そのレポート。


まず、車両の数が多い。他の支援連隊の約2倍の130両にもなる。また、機甲師団対応のため「燃料小隊」が独立しているのも特徴。
細かい配慮(案内板の分かりやすさ)なども紹介しているし、実践的な訓練の成果として「轍を放置しない」というところにも感心している。

10年先のアメリカ四軍航空戦力の行方(石川潤一)

予算案や退役計画をベースに、保有機種数の推移をまとめた記事。数字が興味深い資料。
例えば、電子戦機だと、2020年にピークが来る。この辺で無人機が中心になると予測できる。

イスラエルのミサイル迎撃コンプレックス(野木恵一)

イラン・イラク戦争を見て、弾道ミサイル防衛に着手したの1980年代初頭。以来、一貫して開発を進めている。米国と比較すると開発方針にブレがないのは、「脅威が明確」だからだろう。
1986年のアロウ1は、米国とイスラエルの共同開発。ただし、予算は米国が半分以上支出しているが、計画の主導権はイスラエルが握っていたという。アロウ1の実験成功は湾岸戦争後になり、実戦配備されたのはアロウ2。


一昨年稼働し、射程数十キロのロケット弾の対策に効果を発揮しているのがアイアン・ドーム。パレスチナテロリストが打ち込むロケットは多いときには月に20発を越す。イスラエルが反撃したらそれを宣伝に利用するという面もあった。アイアン・ドームはかなりの好成績をあげているようで、数え方次第だが撃墜率は90%を越すという。既存技術できっちり組み上げたシステムというところがイスラエルらしい。

兵隊のいない高級士官ばかりのロシア軍(小泉悠)

セルジュコフ改革の現状についての解説記事。
まず、セルジュコフ本人については、「立案者ではなく、実現するためのPMだった」という分析をしている(p.109)。
改革への反発は「人員削減の対象となる将校団」「外国製兵器によりシェアを奪われることを懸念した軍需産業」「領分を侵されると懸念した情報機関(FSB)」あたりが強かった。


で、セルジュコフ失脚後にどうなったかというと、著者は「大規模戦争型の大量動員軍からコンパクトな小規模紛争対処軍への移行は守り切った」と評価している。
そして、現状の評価には、今年の「ザーバド2013演習」の内容が焦点だとしている。(大規模戦争を想定した演習か、小規模紛争を想定した演習か)

台湾有事&弾道ミサイルの集中攻撃!オキナワ嘉手納基

台湾有事の際には、空母よりも航空基地の方が戦力として重要という分析。(ただ、防空能力は空母の方が強い)。
中国本土からの距離、台湾までの距離、を考えると一番重要なのは嘉手納となる。当然、中国側も大量のクラスター弾頭ミサイル(DF-15, DF-21C)を撃ち込んでくることが予想される。記事では、70〜80発と推定している。

中国独自の空母建造と大型軍港の建設(田中三郎)

中国が、海南島南部に建設中の一大軍事拠点についての開設。数年後に読み直すと興味深そうな記事。


空母用桟橋の建設が確認されており、空母の配置もここになる可能性が高い。
他に、弾薬庫、ミサイル基地、防波堤、燃料基地、大型水上艦用桟橋、海南島高速鉄道(北京までつなぐらしい)などを紹介している。なお、艦載機用陸上基地の建設はまだで、記事では海南島に建設されると予想している(海南島のどの辺か、というのが重要)