失敗のメカニズム―忘れ物から巨大事故まで (角川ソフィア文庫)
- 作者: 芳賀繁
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2003/07/01
- メディア: 文庫
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いわゆる「指差呼称」の効果がきちんと実験で確認されていることや、その内容も紹介されている。
よく、「安全」と「安心」の違いというのが話題になるが、本書では「安泰と安全は区別しなくてはならない」(No.2518)という書き方をしている
お家の安泰を願うことはあっても、旅の安泰を願うことはない。
目的地に無事到着することが旅の安全だからである。布団をかぶって家で寝ているだけなら、安泰はあっても安全はない。
およそ何事であっても、何かを為そうとすれば多少の危険や障害が伴うものだ。
(No.2167)
「安全する」という言葉はない。だから、「安全する」ことと「働く」こと、「安全する」ことと「運転する」こは秤にかけられないのである。「安全に働く」、「安全に運転する」しかしようがない。(No.2175)
前世紀からこういうことはきちんと指摘されており、そしてメディアの偏向報道を中心に、あまり改善していないことがわかる。
本書で興味深い指摘が一つあった。
一般に女性よりも男性が、年配より若者がリスクテイカーであると言われ、調査でもそれを裏付けることが多い。ところが、アンケートの回答ではなく実際の活動を観察したところそれとは違う結果が出たというのだ。
JR総研の研究グループは、自転車の夜間無灯火走行も観察したが、この場合ははっきりと女性の方がリスクテイカーである。
どうやら性差に関しては、質問紙調査の結果を再吟味する必要がありそうだ。女性は自分の不安全行動を実際よりも少な目に答えるのだろうか。(No.1721)
最新の調査でも同じなのかは分からないけれど、回答の基準取り自体に性差があるなら、結果に性差が出てしまうというのはなるほど。