k-takahashi's blog

個人雑記用

健康食品のことがよく分かる本 〜健康食品こそが不健康

「健康食品」のことがよくわかる本

「健康食品」のことがよくわかる本

結局のところ、健康を意識した食事というのは「程々の量を」「偏食せずに食べる」に尽きる。先日もそういうデータが発表されたいた。
健康食品だろうが、健康に良いと言われている食品だろうが、そればかり食べれば「偏食」なわけで、一般的に言えば「不健康を招く食事」になるリスクが高い。それどころか、「普段は大量には食べないもの」の中には大量に摂取すると問題を起こすものが含まれていることがある。本書で出ている例だと「昆布」。ヨウ素の含有量が非常に高いため、度が過ぎると甲状腺機能障害を招く恐れがある。または蜂蜜。こちらはアルカロイドが含まれていることがある。アルカロイドの量は元となる植物の種類に依存するので、色々な花の蜜が混ざったものが望ましいとなる。健康食品と称して「○○の花だけから」とかいう方がリスクが高いのだ。


といった内容が豊富な実例付きで説明されている。


そういった知識の前提としてという位置づけだが、医薬品がどれほど徹底的に調べられているかということも分かる。そうした「医薬品」に対して、「医薬品に擬態して医薬品の信用を利用する」(No.1220)のが「健康食品」というわけだ。


健康食品の位置づけは地域毎にばらつきがあり、それは基本的には各地域の事情を反映したものなのだが、どこの国にもしょうもないやつというのはいるものだ、ということも分かる。米国のダイエタリーサプリメントとか、韓国の健康機能食品(定義自体が朝鮮人参のためにあるような状態)とか。日本の状況も

欧米では科学的根拠がないと判断されるような機能性を宣伝した食品が多く販売されているという状況はしばらく続くことでしょう。(No.1659)

である。


凄い例が「イチョウサプリメント」。イチョウ葉には動物実験で発がん性が確認されており、『食品添加物だったら認可申請は諦めることでしょう』(No.1273)という代物なのである。しかも、効果については実験により「ある」となったり「なかった」となったりする程度である。こういうものが堂々と売られている。
さらにこんなエピソードを紹介している。

その年配の女性も熱心にいろいろな「勉強」をされてきたようで、「食品添加物は安全性が確認されているといわれても信用できないし、体に悪いと思ってずっと避けるようにしてきた。今まで参加した講習会ではそういう話ばかりだったから」という感想を述べられました。そして「高齢になってからの認知症が心配なのでイチョウサプリメントがいいと聞いたので毎日飲んでいる」とおっしゃったのです。(No.1316)

きちんとした方法論無しで「勉強」すると、逆効果になってしまう。



健康食品の悪影響の例としては、こんな記載がある

特によく聞く事例は、健康診断などでお酒の飲み過ぎによる肝障害の可能性が指摘されて、お酒を控えるように、と指示されている人が、肝臓に良さそうだからという理由でウコン製品を使用し、お酒は控えない、あるいはウコンを飲んだのだから大丈夫と思ってむしろ多く飲む、という使い方です。これは肝臓にとって非常に困ります。
これはいわゆる健康食品の、負の側面を象徴する使い方で、肝機能が心配ならお酒を控えるしかないのです。効果のない健康食品を使うことで偽りの安心感を得てしまい、必要な対策をとらなくなるのです。(No.652)

似た話は高血圧にもあって、「高血圧に効く」と称するいかなる健康食品よりも、塩分を控えめにする方が圧倒的に効果があることが分かっている。(あるいは、医師の指示に従って降圧剤を服用する。) こちらも、怪しい健康食品を使って本来取るべき対策を怠ってしまえば将来のリスクを高める結果となる。


とにかく豊富な実例が興味深い一冊。


本書で畝山先生はかなり手厳しく「健康食品」を批判している。元々の「健康食品」の意図は、「医薬品ほど厳密に確認できてはいないけれど、もしかしたら効果があるかも知れないものについては、害がなければ認めましょう」くらいのものだったはずで、そういう風に(気休め、話の種やおまじないとして)運用されているならば良かったのだが、実際にはかなり酷いという現実がある。