k-takahashi's blog

個人雑記用

人工知能は人間を越えるか 〜ディープラーニング(特徴表現学習)とは何か

近年急速に関心を集めつつある「ディープラーニング」。解説記事とかを幾つか読んだことはあるのだが、しっくり腑に落ちる感じがしていなかった。
本書は、人工知能学会編集委員長でもあった松尾豊准教授が一般の人にも分かるように丁寧に解説してくれている。過去の人工知能研究の位置づけから始めて、ディープラーニングの意義を分かりやすく説明している。本書を読んでやっと「腑に落ちた」感が得られました。今までに読んだディープラーニング関係の本や記事、解説の中で、最も正確さと分かりやすさを高いレベルで同居させている一冊だと思う。

第三次AIブームは、図3のようにビッグデータの時代に広がった機械学習と、技術的に大きなブレークスルーであるディープラーニング(特徴表現学習)の2つの大波が重なって生まれている。
No.630

AIの話をするときによく出てくる「オントロジー」。これも説明がしにくい単語なのだが、説明の流れに乗って

知識を記述するのが難しいことが分かってくると、知識を記述すること自体に対する研究が行われるようになってきた。それがオントロジー研究につながった。
オントロジーとは、哲学用語で「存在論」のことであり、人工知能の用語としては、「概念化の明示的な仕様」と定義される。情報システムをつくるときに、そこに明確な仕様書があるべきなのと同じように、知識を書くときにも、そこに仕様書があるべきだろうという考え方である。
No.913

と解説してくれる。


ディープラーニングの「ディープ」がニューラルネットの「多」階層であることはどんな解説にも書いてある。が、それを「特徴を抽出するとは」という部分ときちんと繋げ、しかも頑健性を増すための学習方法まで解説している。ここまで分かりやすいのは初めてだった。


著者は、

「特徴表現を学習する」という技術を使って、いままでの人工知能研究がもう一度なぞられるような発展をとげていくのではないか
(No.1782)

という予測も書いており、今後1〜2年のAI研究発表の見方まで提供している。
AIの歴史とディープラーニングの概要とおまけにここ1,2年の研究の鑑賞法まで分かるというお得な一冊。お薦め。