k-takahashi's blog

個人雑記用

表現の自由の守り方 〜手を変え品を変え、規制派の活動は続く

昨年の4月に出た本。山田太郎議員(当時)の3年間の活動報告書。
児童ポルノ禁止法」(2013年)、「著作権非親告化」(2015年)、「国連(女子差別撤廃委員会、ブキッキオ問題)」(2016年)、「軽減税率」(2015年)、「通信の秘密」(2016年)、「子ども・若者育成支援推進法改正」(2014年)の各問題について、「敵」がどのように表現規制を進めようとし、それにどのように対抗してきたかがまとめられている。


個々の問題については「あったな」と思う人も多いだろうが、まとめて並べられると大変だったなというのがわかる。
大きなものが大々的に悪用されるリスクももちろんあるが、これらが全て一事が万事ということでもないだろう。ただ、楽観できるような状況でないことは間違いない。


私が読んでいて驚いたのは「敵」があの手この手で仕掛けてくる手口。

国連の悪用の例だと、誤解だろうが捏造だろうが国連の名の下に勧告を出させさえすれば、日本国憲法の98条により国内法よりも勧告を優先させるという解釈も成り立つということ。この解釈は知らなかった。
ブキッキオの偏見をベースにしていようがなんだろうが、勧告さえ出させてしまえば、それを口実にマンガを弾圧することは不可能ではなくなってしまう。規制強化勢力は、この仕組みを知っていて、その上で例の「30%が援助交際」というのをブキッキオ氏に吹き込んだのだろう。

あるいは「推進法改正」。改正と言いつつ中身は全く別物なのだが、手続き上は「改正」。
新規に立法する場合は様々な手続きが必要だが、改正の場合は、最短2日で通過してしまう。山田先生もあやうく見過ごすところだったという。


一方で、「言葉遣い」や「前例」にはそれなりの重みがあると言うことも分かる。
規制する側、取り締まる側にとって都合が良いのは「基準が曖昧であること」。そこで国会答弁で「これは違いますよね」「これはやってませんよね」という形で線を引いていく。山田氏の質疑がそういう意図のもとで行われていることが、多くの実例で紹介されている。


表現規制問題の事例解説の本であるのはもちろんだけれども、国会・官僚の仕組みを理解するための副読本としても読めると思う。


時期的に夏の参院選(改選)に向けた山田議員(当時)の宣伝の本でもある。本書が出る頃には、もう再選はかなり難しいと言われており、引退に向けての総括報告といった位置づけでもあったのだろう。