k-takahashi's blog

個人雑記用

軍事研究 2017年5月号

軍事研究 2017年 05 月号 [雑誌]

軍事研究 2017年 05 月号 [雑誌]

金正恩が狙う在日米軍基地はどこだ!(福好昌治)

なにやら実世界の情勢変化が急だが、記事自体はその前に書かれたもの。
北朝鮮が攻撃目標とするであろう米軍基地はどこかという記事であるが、同時に各基地の役割の解説でもある。
例えば、青森県の車力基地のレーダーが北朝鮮からハワイを守るためレーダーであるのに対し、経ヶ崎はグァムを守るレーダー、といった具合。

兄殺し!「金正男」を襲った猛毒「VX」(小林直樹

VXガス自体の歴史と効果の解説。
VX自体は「長時間作用する」ことに軍事的意味があるといった解説や、それゆえ空港ロビーでの使用には向いている(もし、サリンだったら、周囲への被害がもっと大きかっただろう)ことなど。
もちろん、要人暗殺のために人混み内で毒ガスを使うのは、普通の常識ではないわけ。それが北朝鮮にとっての合理性かもしれないというのは持っておかなくてはいけない視点。

秘密警察「国家保衛省」金正男暗殺!(黒井文太郎)

では、金正男を襲ったのは誰(どこの機関)か? 軍の「偵察総局」と省の「国家保衛省」の二つの候補があるが、両者と前身となる組織を解説する記事。
日本では、大韓航空機テロや日本人拉致が知られているが、まあ、あるわあるわ。
記事では一つの仮説として、韓国メディアでの北朝鮮批判の高まりに起こった金正恩が亡命者の処刑を命令し、自分たちが粛正の対象になることを恐れた国家保衛省が拙速に行ったのでは、というのを出している。

三菱重工案を破り小松製作所案が採用(岩本三太郎)

「装輪装甲車(改)」で小松製作所の提案が採用された理由の推察記事。
防御力と機動力については三菱重工業案が上だが、戦略機動性と価格では不利。岩本氏が推測しているもう一つの理由が「非代替性」。三菱重工業案を取ってしまうと、「それなら海外製でいいのでは」という話になってしまうからではないか、という説。

オバマ嫌いのトランプが核軍縮を無効にする?(小泉悠)

前からもめていた米ロの核軍縮条約更新問題。トランプの姿勢の不透明さとロシアのINF条約違反疑惑とが重なり、さらにかねてから問題になっていた中国などの中距離核保有の件がある(ロシアからすれば、周囲に中距離核を配備する国があるのに自国だけ制限されているということになる)。

次世代のための米高等練習機「T-X」(林富士夫)

現有のT-38を更新する2兆円規模の巨大プロジェクト「T-Xプログラム」の解説。
T-38は優秀とはいえ、現在ではすでに練習機としても能力不足で、更新が必要というのが基本。現在6チームが応募している。
そもそも何を訓練するのか、それをどう効率化するかという話もあれば、LM社の独占は色々弊害が出そうだという技術基盤維持の話もある。
おもしろいのが、Embedded Training。練習機に実ミッションと同様の表示ができるようにする(つまり、シミュレータを練習機に組み込む)というもので、確かに効果はありそうだ。

海兵隊の『ウォーファイティング』(田村尚也

海兵隊が1989年に発布した士官向けのFMFM1、1997年に全海兵隊員向けに発布されたMCDP1。その両者に「ウォーファイティング」というタイトルがついている。
抽象的で難解との批判もあるが、その序文の全訳を紹介し、どういう「哲学」で戦争を捉えているかを示す文書であるという説明をしている。例えば「マニューヴァー」。単なる空間的機動のことだけではなく、優位を作り出す行動全てだとし、(半ば冗談ではあるが)上官から物資を交付してもらうための交渉術もマニューヴァーの一つと捉えるのだそうだ。
正直言って、文書を読んでも腑に落ちたとは言えないのだけれど、軍人さんは大変だ。こういうのを扱うのだから上級士官に学究肌の人がいるのは当然なのだろう。