k-takahashi's blog

個人雑記用

不見の月

 

不見(みず)の月 博物館惑星?

不見(みず)の月 博物館惑星?

 

オーストラリアほどの広さを持ち、ラグランジュL3に浮かぶ巨大博物館アフロディテを舞台にした短編集。博物館惑星の続編になる。

主人公は新人自警団員の兵藤健で、警察と新AIの試験教育という二つの役割を負っている。芸術の専門家ではないという設定なので、読者への説明役でもある。

 

AIを隔離環境で育て、評価するというと、「未来の二つの顔」を思い出すが、本作は先端的芸術活動を通じた近未来ものといったぐらいの位置づけ。

ガジェットや新素材を芸術家という変人がもてあそぶ様子が愉快(健は振り回される役割)。個人的にはギーク系の方が好きだけれど、芸術家の方が属人性が高くなるので、キャラは立つんだなあ。

盲目の批評家が、反復鑑賞可能なテクノロジーを使った盲目故の鋭い分析という陥穽に落ち込んでいくが、新たな視覚変換デバイスが登場し、という『お開きはまだ』が気に入った作品。この辺は『誰に見しょとて』に通じる。