k-takahashi's blog

個人雑記用

魔法を召し上がれ

魔法を召し上がれ

魔法を召し上がれ

 

 

「魔法」は手品、「召し上がれ」はレストランのことで、レストランでマジックを披露する若者が主人公のSF。

身体性やクオリアとの関連で言えば、確かにマジックは面白い視点で、ロボットに手品をやらせたり、ロボットが手品を面白がるか考えたりするのは興味深い。そこが瀬名秀明が目を付けた理由なのだろう。

 不器用なホラー作家という登場人物が出てきており、やたら好奇心旺盛であちこち取材に飛び回ったりするなど、瀬名自身の一面を切り取ったような設定になっているが、これは軽いお遊びという感じか。彼を巡る小ネタは、瀬名と同世代向け。

 

 主人公のヒカル、そこに相棒となる試作ロボットとのミチルが「預けられる」という形で加わる。瀬名秀明の一連のロボットものと背景を共有しているという設定で、ケンイチ君も話題として登場する。

SFよりはミステリーの味わいが強く、それ以上に二十歳そこそこの若者(高校卒業後にプロのマジシャンになった、という設定)であるヒカルの成長物語の面が強いのだが、ベースに「ロボットとは」という瀬名のいつもの問題意識があるので、SFに戻ってくるという感じかな。

 

意識体(ヒトやロボット)にとっての「物語」とは、というのも例によって出てくる。いつもの問題意識について「手品」というのを持ち込んで語り直した話なので、いきなり読むとちょっと難しい話になってしまうのかもしれない。

 

「現在進行形」というキーワードが何度か登場するのだが、私としてはここはつかみ切れず引っかかっている。