- 作者: 瀬名秀明
- 出版社/メーカー: ポプラ社
- 発売日: 2011/04/14
- メディア: 単行本
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本書は「夕刊フジ」の医療健康欄に2007年から2009年にわたって全90回連載されたコラム「イヴのみる夢」を初出順に完全収録したものです。柔らかめの記事(そうです。あんな記事やそんな記事です)が多い紙面の中で(まえがき、より)
というちょっと変わった最新医療情報紹介本。媒体の性格上、読者は中年男性を想定しており、メタボや加齢臭、呆け、生活習慣病などがちょくちょく登場するし、想定生活もそのへんが前提。分量も1項目2〜3ページとシンプル。
研究成果の紹介に合わせて少しだけSF的な想像を加えて「こんなことができるようになるかも」という話も書かれている。とはいえ、例によって瀬名秀明なので、真面目な部分はとことん真面目。
単行本化にあたって、最新情報の追加と内容のチェックも怠りない。面白い本です。
想定読者が気にする糖尿病の関連だと、「I型糖尿病が人類にとって氷河期の生き残り戦略の名残だという仮説」を紹介している(p.39)。体内の血糖値が高い人の方が凍傷になりにくかったからではという話なのだが、アメリカアカガエルが似たようなメカニズムで凍らないようにしているエピソードを紹介している。そして、このカエルの研究から糖尿病の薬ができるかもしれない、とまとめている。最後の部分では、人工冬眠の話題も出して、ちょっとSFっぽい。
他にも、カジノのバニーガールのコスチュームがセクシーな理由(p.81)とか、一捻りした面白い話題の出し方が多い。
ただ、最終回は少々思い切った話題。
新聞を広げて倫理予報を見る。Y社とZ社の予測推移がホログラフで現れ、倫理景気が上向きになったことを知ってほっとする。新しいMAC9細胞で妻の腕にアシスト分子モーターを移植する再生治療の時期がやってきたのだ。10年前ならこういった治療はまだ社会の反発も大きかったが、人々の生命倫理観の将来的変化を株式や天候のように予測する方法が発見されてから、倫理観が熟するまで資金を積立て、心理的にも負担をかけず治療に専念する社会システムが整ってきた。(p.200)
SF小説の冒頭だとしても全然違和感のない描写。
実は、これに限らず、短編SFのネタに使えそうな話題もたくさん収録されているので、そういうネタ集としても使える。