k-takahashi's blog

個人雑記用

 「正しさ」の商人 情報災害を広める風評加害者は誰か

福島原発事故やワクチンなどで繰り返されている「風評加害」。それはどのようなものだったのかの情報を集め、分析し、対策を検討している。個別の事象は見聞きしたことがあるものが大半だが、それを「情報災害」という観点で整理し、情報災害の実態・被害・犠牲を可視化してくれている。いまだにメディアや活動家による差別・風評加害行為が続いている現在、彼らに騙されず社会をよくしていくために読んでおくべき一冊。

 

情報災害についてはこんな感じでまとめている。

1、「情報災害」とは風評など人々の内心の不安やデマ、それらが伝播する流言によって生じるものであり、災害本体に勝るとも劣らない人的・物的被害を発生させる。

2、特に現代社会において「情報災害」が多発する要因は、人々にとっての「信頼性を担保する存在」の不足と、それを補うための「救い」が多様化したことにもある。

3、情報化社会かつ人権意識が高まり、「救い」も多様化した社会においては、誤った情報伝達の多くは、「正確な認識(Correctness)」あるいは「救い」と信じられ、共有された独善や正義によって行われる。

それらが「情報災害」の発生や維持・長期化を支えている。(no.3474)

 

「 情報災害」とは、 誤った情報により助かったはずの存在に犠牲と被害をもたらす災害 (No.304)

情報災害は完全な人災であるが、古くは流言飛語やデマ、最近だとメディアやSNSによるフェイクニュースが主な要因となる。

 

その他の災害同様に、情報災害も複合的なものとなることが多い。それを

「政治的プロパガンダ」「商売目的」「自己顕示欲の発露」(No.940)

と分類している。いずれも特定集団の利益のために情報災害を引き起こしていることになる。「ニセ」の「正しさ」をばらまく行為をさして、タイトルの「正しさの商人」と言っているわけだ。ここの「正しさ」は、本来Correctnessのはずなのだが、それを彼らは独善的なJusticeにすり替えている。こうしたまがい物の「正しさ」をばらまく行為は、商行為としてみても「悪」と言えるだろう。

 

分析を進めていくと、「情報災害」に対応するにはどうすればいいかの知見も出てくる。

まず、マスコミはというと、

 マスメディアは間違った情報を流布・煽動したことに謝罪や訂正すらなきまま(No.247)

これは反ワク行為についての指摘。福島差別については現在進行形で加害行為を続けているところも多い。

決して「正しい情報が不足している」からではない。伝達を妨害するノイズこそが問題の本質なのだ(No.517)

だから「妨害」を取り除くことが大事になる。しかし、

行政、特に当事者である福島県は「正確な情報発信」ばかりを是とした一方、無数の誹謗中傷やデマには法的対応どころか抗議や反論すらほとんど行ってこなかった。事実上、「 粗悪な情報を放置し続けてきた」のだ。(No.528)

結果として、情報災害に対する防災・減災は機能しなかった。

民間でも、

加害者側には沈黙する一方で、被害者にばかり罪悪感をなすりつけ、「生意気な」言動を抑圧・支配しようとする独善的な「批判」が、特に第三者的な立場を称する人々から「忠告」「善意」「客観性」「是々非々」を装って容赦なくぶつけられた。(No.709)

実際には、「第三者」ではなく、上述のプロパガンダや自己顕示欲目的だったわけだが。

だから、

「情報災害」対策は「正しい情報の普及」だけでは不十分で、同時に「誤った情報の排除」も必要不可欠であることが示されていると言えるだろう。(No.3349)

 

とは言えこれが容易でないことは、ニセ科学との長い戦いを知っている人にはすぐ分かる。先は長い。