- 作者: 松永和紀
- 出版社/メーカー: 女子栄養大学出版部
- 発売日: 2012/12/01
- メディア: 単行本
- 購入: 17人 クリック: 396回
- この商品を含むブログ (3件) を見る
やっぱり、福島第一原子力発電所事故後、食品の汚染を心配し、混乱したのはどちらかといえば女性、それもお母さんが多かったように思えたからだ。事故以降、おそらく50〜60回ほどは講演したと思うが、女性が多く聞きに来てくださり、終了後に「小さい子どもがいるのですが、○○は大丈夫ですか?」と尋ねられることがしばしばだった。
http://www.foocom.net/column/editor/8381/
そうしたお母さんたちにまずは、本を手に取ってもらいたい、と考えた。
では、お母さんたちになにを伝えたいのか? それは一言で言うと、もっと幅広く食のことを知ってほしい、ということに尽きる。
という意図はよく分かるし、本自体の中身はよいのだけれど、やはり「本当に、おかあさんたちに届いたか?」というのはよく分からない。
ちょっと探してみたのだけれど目次が公開されていないようなので、以下に引用。ある程度分かっているひとなら、この目次から内容は分かると思う。
- 第1章 食品と放射性物質
- 第2章 生物から体を守る
- 肉、レバーの生食は危ない?
- 冬の食中毒を撃退するには?
- 微生物による食中毒を防ぐ6つのポイントは?
- 牛海綿状脳症(BSE)はどんな病気?
- アレルギー表示、どう見る?
- 化学物質から体を守る
- 思い込みの怖さを知る
- リスクの考え方を知る
- リスクの意味、理解していますか?
- 食品安全行政の仕組みは?
- リスクの比較をしてみよう
- 適正消費者規範を作りませんか?
松永氏の一番の主張は、最後の「適正消費者規範」の訴えだと思う。本書を読むと、「食の安全をチェーンとしてみたとき、消費者の部分は鎖の弱い部分にあたるのではないか」という感想を持つと思う。
ならば、この弱い部分を強化するのが安全の強化に繋がるのであり、そのための方法として「適正消費者規範」という考えになるのだろう。
(個人的には、メディアの部分も弱い鎖だと思うが。)
松永氏自身も含め全てを完全に知っている人などいない。著者みずからのエピソードとして、夫がノロウイルスに感染したときに、厚生労働省のサイトを調べて「アルコールではなく塩素系漂白剤を」というのを読むまで誤解していたというエピソードを紹介している。(p.83)
もちろん松永氏は「きちんと調べ」たから、速やかに軌道修正することが出来た。これが「規範に従う」という一例だろう。
本書の最後で松永氏がまとめているのは以下の7項目。当たり前のことではあるが、「規範」と意識するのが大事なのだろう。
- 食品はていねいに扱う
- 表示をよく見て利用する
- 適切な調理と保管を心がける
- バランス良く適切な量を食べることを心がける
- 食べ残しを減らし省エネルギーを心がけ、環境、地球を守る努力をする
- フードチェーン全体に関心を持ち、関係者の努力を知る
- 特定の情報のみを信じるのではなく、多角的な情報袖手を心がける。
自分用メモ
生産者に尋ねると「安い価格なら売れる。それがくやしい」と口をそろえます。「本当に心配しているのではなく、なんとなく不安なだけ。だから安ければ買うのだろう」と言うのです。気分で被災地産を避ける。これはまさに「風評被害」といえるのかもしれません。(p.55)
地元紙の「福島民報」は主見出しで「被曝推計1ミリシーベルト未満が6割」と、県民の多くが該当する数字を伝えようとしたのに対して、朝日新聞は「外部被曝 最高37ミリ」と最も高い人の数値を伝えています。(p.68)
アレルギー患者やその家族の不安に乗じて、安易に「アレルギー患者が食べられる」などと食品を宣伝する業者がでてきていることです。(p.116)
数日前に、急に消費者庁が「アレルギー患者が食べられる」と称する卵の販売サイトに関する注意喚起のエントリーへのアクセスが増えて驚いたのだけれど、まさにこの話題。松永先生もお書きになっている。
飽和脂肪酸の含有量の増加が目立っているのです。飽和脂肪酸のとりすぎも、冠動脈疾患のリスク増加につながるとされています。トランス脂肪酸を減らそうとして食品事業者が原料を変えたり製法を変更すると、飽和脂肪酸の摂取量が増えるというトレードオフが起きるのではないか、という懸念は以前から指摘されてきました。それが実際に起きているようなのです。(p.164)
死をもたらすような毒性物質を持つ食品なんてとんでもない。じゃが芋は禁止しろ、と考えますか?(p.248)