k-takahashi's blog

個人雑記用

パックマンのゲーム学入門

パックマンのゲーム学入門

パックマンのゲーム学入門

 パックマンの作者として名高い岩谷氏の著書。 第1章が自伝、第2章がゲーム造り論、3章以降が著名人との対談記事、 という、ありふれたと言えばありふれた構成になっている。
 出来は5段階評価の4くらい。 基本的には当たり前の話が中心だがまとめ方はきちんとしている。 分野に興味のある人は、この手の本を最低でも1〜2冊読むべきだが、 その中の一冊としては安心して薦められる。
 後半の対談云々の部分に「ああ、またか」感があるのは仕方がない。 読者全部が過去の色々な本を読んでいるわけではないのだから。 (でも、浜野氏との話はちょっといい。)


 面白かったところろ幾つか紹介。

動詞でゲームをつくってみる(pp.104-105)

パックマン(食べる)を考えた人ならではですね。 発想法の訓練としても面白いと思います。

対戦ゲームのスタイルが確立する前は対戦プレイを否定され、 対戦プレイが確立すると今度は当初主流だったシングルプレイを否定されるという 皮肉な結果となりました。(pp.105-108)

ファイナルラップとリッジのことです。 リッジの時には「ドリフトなど、走りそのものを楽しむドライブゲームである」 というアピールがなかなか分かって貰えなかったとか。

映画の業界で革命を起こしつつあるのは、ジャニーズ事務所です。 ジャニーズ事務所では、映倫を通さない自主流通の映画を作っている。 監督も、ジャニーズ事務所のタレントのイメージさえ傷つけなければ、自由に撮ることができる。

これが、表現の自由度をある意味で高めているということらしい。 小うるさいところというイメージがあったのだが、 意外と太っ腹なところもあるんですな、ジャニーズ事務所


あと、資料的に面白いと思ったのが、PSの話の部分。 「プレイステーションナムコ」(pp.78-80)によれば、

1992年当時、ナムコでは独自の家庭用テレビゲームのハード開発の計画が動いていました。
アーケードでハードの開発もしているため、既にスペックに関する想定もできており、 描画機能などについてもおおよそ見当をつけていたのです。 つまり、ハードウェアのアーキテクチャー設計まではできていたといっていいと思います。
中略)
早速、久多良木氏に電話を入れ、概要を伝えると、何か妙な反応でした。
「まずは、とにかく会ってお話をしましょう」ということで、その後簡単な会合が行われました。
すると会合の席で久多良木氏から思わぬ事実が伝えられたのです。
それは、「我々は現在、家庭用テレビゲームのハード開発を行っている」という、 大変にショッキングな発言でした。

これがなぜ面白いのかというと、 PS開発史の基本文献である「ソニーの革命児達」によれば、 SCEナムコの第1回の会合は93年6月18日と記されているから。 同書によれば、第1回目の会合では「アーケード機能を家庭用に落とすのは来世紀だ」 と言った反応だったとのこと。1年の差はさすがに大きい。 (例のバーチャショックが93年(93年11月が初公開、12月リリース))
岩谷氏は92年としか書いていないが、これが92年末だとするとつじつまが合わなくもない。 ただ、前後の関係とか見ると、93年の書き間違いような気がするが。