- 作者: 笹沢教一
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2006/12
- メディア: 単行本
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もちろん、実際に火星に行ったわけではないが、火星協会の「火星砂漠研究基地」、ホートン火星プロジェクトの実験基地、ゼロ・グラビティー社の無重量体験ツアー、などに参加したレポートである。
実際に火星に行くとしたらどうなる、使う道具をどうする、といった実験が続いているのである。宇宙服を着て実際に歩いてみて支障がないかどうかをチェックする。地質調査のための自動式ドリルを作る、移動用の機械を組み立てて動かしてみる、などなど。)そこに実際に地質学者兼ジャーナリストとして参加したレポートである。「思ったより大変」「意外と楽」という細かい描写が楽しい。やっぱりトイレは色々と大変なようで。
一つ私が見落としていたのが埃。色々と問題だそうだ。月や火星に長期滞在した場合、どうしても外部の埃が入ってきてしまう。その埃が粘膜に相当の悪影響を及ぼす可能性が高いそうだ。(地球の埃と違って、細かく鋭いため、アスベストに似た問題を引き起こす可能性がある。)
マーズ・ダイレクトを主導するズブリン博士のインタビューもあり、割とナイーブな「宇宙に行くのは当然だ!」論を訴えている。日本にだってこれくらいの情熱を持った人はいる。キューブサットだって頑張っている。が、ここまで実行してしまえる力、そこに研修として学生を呼んでしまえる力、こういったものを含めての底辺の広さ厚さは、やはり追いつくのは大変そうだ。
例のふじプロジェクトの時に、色々偉そうな話をずいぶん聞いた(もちろん、最前線で頭を絞っている人たちを批判するつもりはない。私も技術者の端くれだ。)が、信じて走る人の数では、やはり相当の差があると認めざるを得ない。 米国の宇宙開発の問題点については、笹本氏の著作*1に詳しいが、両方の意味でNASAだけ見てても駄目なんだな、と改めて思った。
*1: