- 作者: 野阿梓
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2008/02/01
- メディア: 文庫
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序章は、小さな天使が熾天使を呼びに行くシーンから始まる。この熾天使セラフィ登場のこのシーンで、セラフィはホンダのモーターサイクルにまたがり、黒い革のジャンパーとトラウザーズに身を包んでいる。これだけでも掴みは充分なのだが、彼に与えられた任務は美神アフロディトの子供達を殺して逃げた悪龍ジラフをとらえ神々の内乱を防ぐことという。
ところが、なぜかハムレットの舞台である中世デンマークに密偵として送り込まれるホレイシォ・シャトオブリアンの物語が挟まれる。
さらには、セラフィの追跡行は、学生運動たけなわの1960年代ニューヨーク、中央アジアでの自動車横断記録に挑む探検隊、シーザー時代のアレクサンドリアと次々と舞台を移して続いていき、一方でホレイシォの目から見たハムレットストーリーも進んでいく。
中盤過ぎに、舞台仕掛けががらりと変転し(書くとネタバレになりそうなのでぼやかしておきます)、どうなるのかと思ったら、最後にきちんと伏線を回収してテーマ的にもまとまってしまいました。読み終えた時点で半ば呆然。
最初、電車の中で読み始めました。電車で読むには少々重いなとなどと妻に話したら、「それは当然だ。電車の中で読む本ではない。あと後半は一気呵成に読むものだから、休日にでも」と言われました。読み終えた後から言うと、妻のアドバイスは正解でした。
最初に出たときは萩尾望都の表紙絵だったそうで、萩尾による漫画化を期待する声もあったとか。結構耽美的な展開もあったりしますが、最初の発表時(1986年)はともかく、現在ではこれくらいの描写は特にどうこういうほどでもないでしょう。そちらを気にしている方はご心配なく。描写が無いとはいいませんが、少なくとも私は気になりませんでした。
ハムレットの粗筋くらいは誰でも知っているでしょうが、読む前に読み直しておくと面白さが増すと思います。というか、そうしておけば良かったとちょっと後悔しました。