- 出版社/メーカー: ジャパンミリタリーレビュー
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面白いのは、「中国人民解放軍の水陸両用戦能力」(宇垣大成)。中国が台湾侵略用に準備している装備の質や量についての解説で、今回は陸海軍(空軍については次号らしい)。
現時点では、両用戦能力を持つ兵数が約3万、上陸は海岸上陸しかできない、と分析している。(米軍のような立体的な上陸作戦を行うには、装備がまったく不足している)。 また第一波として上陸できる戦力は兵員6000人、AFV400両程度であり、上陸箇所も一カ所。
中国軍が制空制海権を十分に確保せず上陸作戦を行った場合は相当の損害が予想される。よって、米海空軍が早期に介入してくる可能性があるかぎり、あまり勝機はないという分析のようだ。
もちろん、中国軍もその課題は分かっているはずで、戦力の強化は当分続くということになる。
ただし、この記事で扱っているのは本格侵攻で、いわゆる斬首戦略ではない。(もしかすると、次号の記事で扱うのかもしれない)
政治関係で面白かったのが「米ロ新核軍縮条約(新START)を読む」(小泉悠)。
特に、核兵器の数の数え方が変わったので、見かけほど米ソの核兵器廃棄量は多くないというところ。冷戦時代には検証が充分できないので「核兵器は最大数搭載されている」とみなしていたが、現在ではある程度突っ込んで検証ができるので「実際の数」とするようにした。すると条約上のカウント数は大きく減ることになるわけだ。
あとは、米国にとってはロシアとバランスを取りながら削減を進めればよいということになるが、ロシアにとっては対中国を考慮しなくてはいけないというところは見落としていた。 米ロ間ではINF全廃条約(1987年)によって、短・中距離弾道ミサイルの全廃に同意しているが、中国はこの種の兵器を400発以上保有している。今のところ中国が軍縮に応じる可能性は低いから、ロシアにとっては対米バランスだけでなく、対中バランスも考慮する必要がある。となると、それほど減らすわけにはいかないとなってしまう。
アフガンでのGPS精度の問題を解説する記事もあった「アフガン作戦を支えるGPS地上局の全貌」(鈴木基也)。まだ、準天頂を幾つかあげれば解決、というわけにはいかないようで、GPS衛星の軌道を変更して対応するのだそうだ。記事中に出てくる地上局の体制や、想定事例(シナリオ)とか、そういう訓練を山のようにしているんだろうな。
運用しながら性能改善をしていくというのはITの世界では珍しくない話だが、数十の人工衛星・地上局を24時間体制で運用しながらだから、難易度はやはり相当高いはず。ご苦労様です。