ゲームデザイン脳 ―桝田省治の発想とワザ― (ThinkMap)
- 作者: 桝田省治,帝国少年
- 出版社/メーカー: 技術評論社
- 発売日: 2010/03/12
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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ネタの善し悪しを見分ける方法として、「短いフレーズにまとめて、人に聞いてみる」というのがある。ここまでは普通に思いつく。全員が賛成するよりも、数人が「すごい」と言ってくれる方が見込みがある、というのもよく聞く話だ。この先が凄い。 「どんなシーンがあると思う?」と尋ね反応を見るのだ。そして、反応が少なすぎたら「分かりにくい」、反応が多すぎたら「前例あり」と疑うのだそうだ。
いかにも枡田さんらしいと思ったのが、「へんじがない ただのしかばねのようだ」という台詞がいかに凄い台詞であるかを説明した部分。
枡田氏はその理由を4つ挙げている。
- 2つの情報をきちんと含んでいること。それは、「あなたが発した目の前をチェックするコマンドは確かに受け取ったという返答」と「その結果、有用な情報もめぼしいアイテムも発見できなかったという報告」
- キャラ立てをしている。少なくとも声をかけているのだから「剣の先で突いたり、脚で蹴ったりするような乱暴者ではない。いきなり直に手で触れるような軽率な人間ではない」という演出になっている。
- 世界観 「この世界には、ただの屍ではなくゾンビのようなアクティブな屍もいますから、注意して下さい。」「この世界では、迷宮に転がった屍はさして珍しくありません。行き倒れたり、モンスターに襲われて死ぬ人が後を絶ちません。無茶な冒険は危険です。」という2つの情報で世界観を示している。
- 行動のヒント 「あなたは目の前の白骨死体と思しきものを確かにチェックしましたが、”今回は”有用な情報もめぼしいアイテムも見つけられませんでした。ですが、この世界のどこかには、有用な情報やめぼしいアイテムが見つけられる白骨死体もあります」と伝えている」
こういう説明の仕方はいかにもだなあ。
長年の枡田ファンなら、どこかで聞いたことのあるエピソードも多いと思うが、こういうかたちでまとめられるとやはり読みやすい。
ゲームデザイン論というよりは、ゲームデザインの特性を理解した上での「企画・デザイン論の実例」なので、ゲーム好きな人なら「企画力を鍛える!」的にビジネス書としても読めると思います。
ウェブ論的に
人間は社会的な動物であるから、誰もが自分を知ってほしいと思っている。
だが多くの人は、小説を書かないしインタビューを受けることもない。"私は"を主張する手段をもたない。まして主役になる機会は 滅多にない。
その望みを数千円でかなえるのがテレビゲームだ。(p170)
ソーシャルゲームが大流行なのも、この流れに乗っているからなんだろうな、と。