k-takahashi's blog

個人雑記用

ここがウィネトカなら、きみはジュディ

ここがウィネトカなら、きみはジュディ 時間SF傑作選 (SFマガジン創刊50周年記念アンソロジー)

ここがウィネトカなら、きみはジュディ 時間SF傑作選 (SFマガジン創刊50周年記念アンソロジー)

 SFマガジン50周年記念アンソロジーの2冊目。大森望氏による時間ネタアンソロジー
時間ロマンスもの、奇想もの、ループもの、と大きく3つに分かれている。チャンの「商人と錬金術師の門」は別格(本作を単行本収録するためにこのアンソロジーが組まれたのだ、というのはSFマガジン大森望本人が書いていた)として、あとはどれが好きかは色々だろうかな。
 歴史は変えられるのか否かという大きな区別があるので、そこを推測しながら読むのもまた一興。


 ここの作品の評価はさておき、個人的なお気に入りは『昨日は月曜日だった』(スタージョン)と『夕方、はやく』(イアン・ワトスン)。
 「昨日は…」は、月曜日の翌日にうっかり水曜日に来てしまった男の物語。月曜日は解体中で水曜日は建設中だと叱られ、火曜日に行くように命令される。「水曜日は時刻ではない。場所なのだよ」。
 「夕方、はやく」は、1日が繰り返される話なのだが、その1日の間に中世から現代に至るまでの歴史が流される。これだけでも充分奇想SFなのだが、もう一捻りあって唖然。


 『旅人の憩い』(マッスン)は、場所により時間の流れが違う世界を舞台にしたSF。戦場の数分が娑婆の数年になる世界で、そこを行き来するはめになる男が主人公。「トップをねらえ」と発想が似ているけれど、こちらはオッサンが主人公。移動の描写や戦闘シーン、そして戦場と娑婆の意識の乖離、など密度の高い短編。