k-takahashi's blog

個人雑記用

軍事研究 2011年03月号

軍事研究 2011年 03月号 [雑誌]

軍事研究 2011年 03月号 [雑誌]

特集は防衛計画大綱。一年遅れで公開された大綱についての解説記事が2つと、各国の国防白書紹介。
田村尚也氏は「動的防衛力構築」という大転換を解説している。

アジア太平洋地域およびグローバルな多国間の関係の重視、平素から警戒監視や偵察活動を行って高い防衛能力を明示し抑止力を高める「動的防衛力」への転換、潜水艦の増強など中国海空軍の近代化への対抗が、これほどハッキリ打ち出されるとは、正直予想していなかった(逆に、武器輸出三原則の見直しが見送られたのは予想通りだった)。
これらは、これまでの『防衛大綱」には無かった新しい動きであり、自衛隊創設以来もっとも大きな変化といってもよいだろう。これだけの変化が、自民党政権下ではなく民主党政権下で決まったことに感慨を抱くのは、筆者だけではあるまい。(p.39)


鈴木基也氏が『中国軍事用GPS「北斗」』という記事で、中華GPSの解説をしている。現在の北斗は、静止衛星2基を基点にしたもので、数秒で測位が可能なこと、メッセージ転送機能を持つこと、といったGPSには無い長所も備えている。
さらに改良型の北斗2も計画中で、結構ごり押ししている様子も書かれている。(ガリレオが先に申請した電波帯域を横取りしようとしているらしい)


自衛隊創設期を綴ったエッセイ『神代の自衛隊』(坂梨靖彦)には、石井中将(文中ではI中将)のことがでてきている。にわかには承伏しかねる内容ではあるが、一つの記録として。


阿部琢磨氏の『諜報IT専門の巨大CIA型民闘軍事会社』は、、いわゆる民間軍事会社(PMSC)の一形態としての諜報機関アウトソーシング会社について解説している。
CIA型PMSCとも書かれているが、もともとは、クリントン政権が流出させた人材が民間に渡り、諜報業務の民間委託先となったところから始まるのだそうだ。ただ、あまりにも人材流出が激しく、結局削減した以上の経費を支払う羽目になってしまっているらしい。民間の方が給与が良いため、政府機関に数年勤めてから民間に移り、そこで類似業務をより高い給料でこなすなどといった事態が頻発しているとも。


おなじくインテリジェンスの記事として橋本力氏の『キューバ危機(前) インテリジェンスの役割と限界』も掲載されている。
成功例として語られることの多いキューバ危機対応だが、実際には、意図や兵器情報の誤認も多かったという。米軍の封鎖時点ですでにキューバには核兵器が運び込まれていたが、ケネディはこのことを知らなかった。もし知っていたら、はたしてあの対応ができただろうか、というのは検討に値する問題のようだ。(この辺の分析は後編)


ウィキリークスについては、黒井文太郎氏が解説を書いている。もはやあらゆる秘密はいつか漏れるという前提で物事を進めなければならなくなるということのようだ。
ただ、

そもそも創設者のアサンジは、ウィキリークス創設の最大の目的として、アジアやアフリカの独裁権力の腐敗を暴くことを掲げていた。そういった国々では内部告発はそれこそ命がけの行為であり、ウィキリークスは完壁な匿名性を武器に、そういった分野でこそ力を発揮できると主張していたのである。
ところが、実際にはウィキリークスは、いわゆる西側先進国のネットおたくの間で話題となり、内部告発者の多くも欧米先進国の人間となった。そのため、集まる情報もどちらかというと欧米の国家や企業の秘密を暴露するものがメインになっていった、という流れがみてとれる。(p.228)

もはや単なる反米ツールとなりつつある現状をみると、結構皮肉ではある。