- 作者: 瀬名秀明
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2011/12/13
- メディア: 新書
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但し、科学の本とはいいながら、紹介している一冊目はドラえもん(これとは別に『鉄人兵団』も紹介している)。他にもSF小説やエッセイが何冊か含まれている。そして、度々クラークと小松左京と星新一が登場する。SFファンとしては、むしろ、瀬名が本書で語っている小松左京論、星新一論、そしてクラーク論が興味深い。
特にクラークは、『楽園の日々』『未来のプロファイル』と2冊扱っているだけでなく、『美しさへ。クラークが描こうとしたもの』という、本書中最長(10ページある。100冊以上紹介しているのに全体で300ページ弱の本書で、一本10ページは破格だ。)のエッセイも掲載されている。また、小松左京論の中にもクラークの『都市と星』が出てくる。
ここで瀬名はクラークを虚栄心やうぬぼれにまみれた「SF」の象徴のような形で扱いつつ(「悪魔」呼ばわりまでしている)、一方でクラークのビジョンや物語の価値を評価してもいる。このあたり、瀬名とSFとの引力と反発力が反映しているようで面白い。
科学の本の書評集、という箱の中にあえてこういうSF論を複数入れてくる。それだけ、「言いたい」「聞いて欲しい」話題なのだろうな。
ブックガイドとしては、「複数の本を読む」という視点が何度も出てくるところが「らしいな」と感じたところ。そういう意味ではもう少しボリュームを増やして、関連書に触れる部分を増やした方が良かったのかもしれない。