k-takahashi's blog

個人雑記用

世界ゲーム革命 〜職人と効率化のせめぎ合いという視点から

NHKスペシャル 世界ゲーム革命

NHKスペシャル 世界ゲーム革命

昨年末から今年の春にかけてNHKで放映された『世界ゲーム革命』『ゲームレボリューション 1/2』の取材内容をもとに一冊にまとめたもの。基本的にはテレビで放映された内容と同じ。なので、番組を見た人の確認用かな、特に大きな違いはないと思う。
水口哲也日野晃博の両氏を日本の将来を背負う人みたいな位置に置いていて、水口氏は後半のインタビューパートでのインタビュアーも担当している。この辺も番組とほぼ同じ。


以下、ちょこちょこと備忘録代わり。

グレンは、同じリアリティでもゲーム制作スタッフとは異なった視点からのアプローチも試みている。銃社会アメリカらしい視点だ。
「個人的には、武器の正しい使い方、安全な使い方を学んで欲しいのです。ゲームとは言え、武器の安全な使用法を遵守することは、私にとって重要なことなのです」
アメリカでは実際に銃を持つ人々がいる。グレンの目には、銃の扱い方に悪い癖を持っている人が多いと映っている。
「私が制作に携わったゲームでは、ユーザーが武器の扱いを間違えないようにする責任があると思っています。ゲームをプレイすることによって、良い癖を身につけて欲しいのです。正しく扱えば、武器は安全な道具なのですから。もちろん、説教じみた説明はしません。サブリミナル効果によって、人々は実際に武器を扱うときに正しい扱い方が身についている。(p.29)

『HOMEFRONT』の軍事アドバイザーのコメント。ゲームの教育的効果を唱う人は多いが、こういうのありか、と感心した。

1997年、モントリオールが属するケベック州政府は「ゲーム産業にケベック州で発展して貰う」を合い言葉に、成長著しいゲーム開発企業を誘致しようと考えた。そこで発案されたインセンティブが「マルチメディア税額控除」と呼ばれる仕組みである。
これは、ゲーム開発企業が従業員に支払った給料に対して、最大37.5%の税額控除を行うという制度だ。所得控除ではなく税額控除という点がミソだ。
新しく拠点を設立したばかりの企業、特に規模の小さい企業は、諸々の出費に対する負担が大きい。当初は利益が出ないため、資金繰りはどうしても厳しくなる。そこで、ケベック州政府は「払い戻しによる税控除」という仕組みを考え出した。
例えば、ある企業が従業員に1000ドルの給料を支払ったら、ケベック州政府は最大375ドルをその企業に現金で還付する。決算で確定した利益に基づく税額を控除するやり方では、現金として還付されるのは決算のあとになる。これでは、日々の資金繰りの不安は解消できない。この仕組みは、新に拠点を設立することで生じる資金繰りリスクを軽減することに役立つ。(pp.66-67)

これゲームに限らずベンチャー育成にありがたい税制だと思う。

苦言

ソーシャル系に余り踏み込んだ話はしていないのは観点の問題だからいいし、水口さんや日野さんの取材部分は面白い。システム整備遅れ問題の取材もしてあって、資料として良い本だとは思うのだが、小川徹によるあとがきに少々嫌な感じの記述があった。

新しいテクノロジーを使いこなし、それを自分なりに発展させていくこうした若者達を単なる「オタク」といって切り捨ててはならないと思った。(pp.264-265)

出ましたね、「単なる○○ではない」。見下して馬鹿にしていたものを認めざるを得なくなった「文化人様」が言い訳に使う常套句。その口で、コミケの二次創作をどうこう言っても説得力ないです。
「ゲームの二次創作は始まっていない」(p.266)というのも変で、最初新清士氏にガイダンス貰っているはずなのに、なんでこう書いてしまうんだろう?(新氏がこの辺の説明をしなかったとは思えない)。