- 出版社/メーカー: シミュレーションジャーナル
- 発売日: 2011/09/01
- メディア: おもちゃ&ホビー
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ゲーム合わせの戦史記事の中では、「データで見る日本海海戦」(森哲史)が面白かった。「T字戦法」についての記事で、文字通りの「T字」は成立していないが、戦闘開始直後に旗艦に攻撃を集中しこれを無力化するという目的で想定された戦法はその目的を達した、という結論になっている。
デザイン討論は、GJ誌のゲームで多用されており今回の奉天のゲームでも使われている、「アルンヘム強襲」を発展させた一連の「強襲システム」について。
議論はカードの取り入れ方、カードの是非あたりが中心で、高梨先生を中心にした批判派とそれに対する説明というような位置づけ。
カードによって持ち込まれる不確実性(相手の手持ちカードの不確実性と自分にどのカードが来るのかの不確実性)は、4系統(アルンヘム、スターリングラード、レイテ、真珠湾、の4タイプ)それぞれで影響が異なっているという話や、アルンヘム強襲のそもそものシステムの位置づけ。(戦術級のファイア&ムーブメントに適しているとか、予備兵力の枯渇によるイニシアチブ喪失が表現できる希有なシステムだ、とか)。
大尉:論点は「アルンヘム強襲」システムと、一般化された少ないカードで回すタイプの近藤さんに言わせれば「似非カードドリブンシステム」が合うか合わないかという話だと思うんですが、たとえ80枚と32枚の枚数の違いがあっても、本質的にカードによる「不完全情報で相手の意図が分からない」ゲームと、「アルンヘム強襲」システムの交互手番による「完全情報だが相手の意図が分からない」ゲームは面白さの種類が違っていて、読み合いの意味も全然違うんですが、「全ユニット同時移動、戦闘」システムでも、単純な「アルンヘム強襲」システムでも、「完全情報」ゲームは皆「相手の意図が分からない」という部分が「不完全情報」に対して本質的に弱い。
だから「アルンヘム強襲」システムのエンジンとしてカードが入ることによって「不完全情報」による読み合いの要素が面白さを損なわずに入った点は、カードの枚数にかかわらずそれ自体が大きな進歩だと思います。(p.57)