k-takahashi's blog

個人雑記用

クトゥルーの子供たち 〜クトゥルー神話の楽しみ方

クトゥルーの子供たち

クトゥルーの子供たち

リン・カーターのゾス神話群を構成する短編(カーター自身はそれを「超時間の恐怖」をいう連作タイトルを付けていた)がある。
これに前日譚にあたる『赤の供物』とプライスの『悪魔と結びし者の魂』、そしてプライスの作品との間を結ぶことになる『夢でたまたま』、を物語の時系列順に並べて構成されたのが本書。
リン・カーターは「せっせと隙間を埋めては整合性をとり続けた」(p.471)作家でもあり、本書のような構成を取るのは、カーターに対するトリビュートとも言えるのだろう。


そもそも小説自体が謎を追究するタイプな上に、クトゥルー神話ものというのが引用と発展の遊びという面が強く、そこに森瀬繚氏による細かな注が付いている。そのため、小説を読む面白さだけでなく資料を読み面白さも兼ね備えた一冊になっていてる。
こういう設定を参照しながら読む小説というのも最近では珍しくないけれど、蓄積の多さや関わった作家の多さという点ではやはりクトゥルーものは(それゆえのややこしさも含めて)頭抜けている。