Newton (ニュートン) 2015年 02月号 [雑誌]
- 出版社/メーカー: ニュートンプレス
- 発売日: 2014/12/26
- メディア: 雑誌
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トヨタのFCV「MIRAI」の紹介(燃料電池セルの酸素の通り道を改良したところとか、700気圧ボンベの安全対策(炭素繊維の巻き方を工夫したり)とか。合わせて製品企画本部の田中義和主査のインタビュー。「水素はプロパンガストかガソリンと同じように危険」という言い方は、苦労が伺える。(FCVについては、カリフォルニア州対策という面もあるようなのだが、さすがにニュートンではそこは触れず)。
脳力低下ウィルス(p.7)
ATCV-1というウィルスに感染した人の認知能力テストの結果が悪かったという話。余りか、ジョンズ・ホプキンス大学のヨーケン博士らの報告。遺伝子に影響があるそうなのだが詳細は不明。
ストレスが免疫細胞の動きを変える(p.10)
「病は気から」のメカニズムについて。交感神経の興奮でノルアドレナリンの分泌が起こり、リンパ球のノルアドレナリン受容体がこれを受け取ると、リンパ節からリンパ球が出ていかなくなる。これで免疫細胞の動きが悪くなるという話。
一方で、リンパ球が減少すると病状が改善する病気もあるというから、ややこしい。いずれにせよ、関係がよく分かれば病気の治療に繋がるだろう。
発電皮膚パッチ(p.13)
経皮投薬において微弱な電流を流すと、浸透効率が上がるという現象が知られている(イオントフォレシス)。通常は特別な装置を用いて病院で行われるのだが、バイオ燃料電池を使って簡単に実現する方法を東北大学の西澤教授らが開発した。
バイオ燃料電池は酵素の寿命が短いという欠点があったが、パッチを6時間程度の使い捨てにすることでこの欠点を回避。うまい発想だ。
珪藻(pp.100-)
顕微鏡で見ると幾何学模様をつくる珪藻。
実は無性生殖では分裂の度に細胞が小さくなる。小さくなりすぎると殻を壊してサイズを戻すのだが、このときは有性生殖を行う。配偶子を交換するにはいずれにせよ殻を壊さなくてはならないから、いっしょにやるというメカニズムだそうだ。
もうひとつ「どうして珪素?」という話もあるが、化学的には大気中の二酸化炭素からセルロースをつくるのも、水中の珪酸イオンからガラス質の殻を作るのも同じようなことになるのだそうだ。そして、この水中の珪酸を増やしたのがイネ科植物だという説もあるそうだ。
アルマ望遠鏡(pp.112-)
試し撮りでいきなり「原始惑星系円盤」の写真を撮って世界を驚かせたアルマ。実は、牡牛座HLは「まだ隙間はないだろう」と思われていたのだそうだ。
あとは、感度や分解能についての説明。
オートファジー(pp.120-)
2013年にトムソン・ロイター賞を受賞した大隅芳典博士と水島昇博士。その研究がオートファジー。細胞内を「掃除」するメカニズム。オートファジーとは、ほとんどランダムに細胞内のものを食べる働き。食べたものは材料としてリサイクルされるらしい。
絶食後半日〜1日程度でオートファジーが活発化するが、まだこの時点では体内脂肪の燃焼は始まっていない。「備えて」動いているのではという仮説だそうだ。
オートファジーの異常が病気の原因になったり、オートファジーが健康維持に繋がったり、という説もあり研究が急速に進んでいる。
記事には大隅博士、水島博士のインタビューも。応用は任せて、科学としての面白さの追求を行っておられるようだ。