k-takahashi's blog

個人雑記用

加齢黄斑変性

今月初めに

 理化学研究所高橋政代プロジェクトリーダーらは2日、iPS細胞からつくった網膜細胞を目の難病の女性患者に移植した臨床研究の手術から1年たったのを機に記者会見し、移植によって視力の低下を食い止められたほか、がん化などの異常もみられないことを明らかにした。

iPS移植から1年、経過良好「がん化もない」 理研会見 :日本経済新聞

という発表があった。昨年の今頃、小保方問題の余波で実施が危ぶまれていた臨床研究だったが、なんとか実施にこぎ着け、その一年後の報告というもの。


これに関連して、学士会という親睦会の会誌に

網膜再生医療を正しく理解する ─ 今後の可能性と限界 ─ (四月夕食会講演)
高橋 政代 (理化学研究所多細胞システム形成研究センター網膜再生医療研究開発プロジェクトプロジェクトリーダー・京大・医博・医・昭61)

最新の學士會会報の目次 | 學士會会報 | 会報・発行物 | 一般社団法人学士会

という記事が載っていた。これは今年の4月に行われた高橋先生の講演会の書き起こしで、網膜再生医療の20年間の流れを説明している。(この手の講演会の書き起こしが毎号掲載されている。普通に公開してもいいと思うんだがなあ>学士会)


脳細胞の分裂が成人後も続いているという研究は聞いていたけれど、これが「視細胞は脳細胞の一部。脳細胞が神経幹細胞から再生するなら、視神経も再生するかも知れない」というアイディアになり、そして「眼科医で神経幹細胞を知るのは私だけだ。この研究は私の使命だ」と決心したのが1995年。ここから、基礎研究、応用研究、実用化研究、臨床研究と続けて20年。そしてこの先に治験、事業化が続く。


事業化のためにはコストを下げなくてはいけない。今は5000万円〜1億円かかりこれでは事業化できない。そのためのアイディアも技術的なもの、自動化、法律による対応、などいくつか紹介している。(山中先生のiPSバンクにもちゃんと繋がっている)


偉いと思うのは、眼科医としての立場を忘れていないところ。
網膜再生をしたからといって昔の視力を取り戻せるわけではない。先生は「再生医療はロービジョンケアとセットで完成する」という言い方をしている。

多くの視覚障害者がそこを取り違え、「健全な諦め」ではなく「残酷な希望」を持ち続けています

この見方は大事で、ここが手薄になっているところをニセ医療がつけ込んでいる構図もある。
最先端医療技術の開発、iPS活用医療という目立つ成果を出している高橋先生には、ぜひこうした情報発信も続けて欲しい。(本来の先生以上の仕事を期待しているのではあるけれど、我々はニセ医療との宣伝戦争もしなくてはならないのが現実)


あとは、やはり笹井先生。本当に惜しい人をなくした。