Newton(ニュートン) 2016年 05 月号 [雑誌]
- 出版社/メーカー: ニュートン・プレス
- 発売日: 2016/03/26
- メディア: 雑誌
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「摩擦も掃除機も電磁気力だ」とか「陽子や中性子の質量のほとんどは、強い力からくるエネルギー」とか「核融合に弱い力が必要」とか従来の解説書だとあまり強調されていないところだと思う。
ヒッグス粒子についても、「弱い力を伝えるウィークボソンは質量を持つため遠くに届かない。その理由を説明するために考えられたのがヒッグス粒子」という説明を入れている。
特集の最後に村山教授のインタビューがあるのだが、この内容が既に解説ページに散りばめられていて、インタビューを読むことが復習になっているという構成も面白い。
重力波と同時にγ線バーストも発生(p.9)
このニュースは聞いていたのだが、「ブラックホール連星の衝突では、ガンマ線バーストは発生しないと考えられていた」というのは知らなかった。「じゃあ、あのバーストは何?」となり、理由は研究中なのだそうだ。(別の天体という可能性も、非常に小さいがあるらしい)
熱水噴出孔で鉱石を養殖?
「何だそれは?」と思ったが、海底を掘削して人工チムニーを作ったという話。JAMSTECの成果で、筒を使ったりすると純度が高く効率的に収集することができるのだそうだ。
採算の話を考えるのはまだ先のようだが面白い実験。
記憶の仕組み
利根川進博士のインタビュー付き。
オプトジェネティクスで記憶を操作するという成果は聞いていたが、以下の部分は知らなかった。
これまでの多くの人は、簡単に言うと、シナプスの強さ(伝達のしやすさ)が変わり、変わった強さが維持されていることによって記憶の情報を保持しているといっているわけです。
最初に記憶を作るときには、確かにシナプスの強さは変わるんです。ところが我々の実験では、記憶を保持するためには、強くなったシナプスをそのまま保持する必要は無いというデータになっています。(p.81)
一旦繋がってしまえばよくて、記憶を保つためにその繋がりを強くするという必要はないらしい。メカニズムはまだ分かっていないが、驚いた。
ちきゅう
JAMSTECの探査船「ちきゅう」。ドック入りの時の写真や、装備、成果の紹介記事。
海底の地下のどこまで微生物はいるのかの調査、東日本震災のときに滑ったプレート境界の資料回収などを行ってきており、次の10年の大きな目標はマントルの回収。
編集長室から
11年間編集長を務めてきた水谷仁氏が退任。
昨今、雑誌の売り上げがきわめて低調という時代がつづいています。その時勢に弊誌も例外でいられなくなり、面白く役に立つ記事だけでなく、新しい時代を意識した記事の企画も必要になってきています。(p.160)
電子版とか積極的に仕掛けているのその辺の布石かな。グラフィック誌の側面も強いから単純な電子化はしにくいというのもあるだろう。