氷川氏のアニメ評論は、アニメーションという技術(背景美術や音響)やビジネスも含めた広い範囲を視野に入れているところが特徴の一つ。
アニメのキャラクター、物語、テーマだけを小説・漫画と横並びに論した文章も 、「アニメだけに生じる特別なこと」を無視する点で同しく空洞化しています 。(No.19)
という問題意識がある。
その上で、新しいルール(ムーブメント)を作ったアニメはなにで、その特徴はなんだったのかということを、アトム、ヤマト、ガンダム、ジブリアニメ、AKIRA、エヴァ、君の名は。を題材にして分析している。
ヤマトでは、
「 消えもの(フロー)」だった「テレビまんが」は、ここで初めて「ストック」に転じたのです。ここが「アニメが文化に高まる変革の第一歩」だった(No.831)
ガンダムでは、
ポイントは「アニメ作家の時代」と「世界観主義の進化」です。さらに、それを可能とした「完全オリジナル作品」の形式が重要だと考えています。(No.940)
AKIRAは、
この種の「大友克洋的リアリズム」を言語化するなら、「緻密さと正確さ」に集約できます。 ふたつは独立しておらず、連動して驚きを発生させる(No.2044)
エヴァは、
アニメの受容形態そのものを変革した(No.2377)
「アニメーションとは動くことに価値がある」という古典的な価値観の破壊です。具体的には「背景美術」と「撮影」に制作リソースを集中することで静止画を処理し 、クレディビリティを高める方法論を採用しました。雲の移動や光源の推移など微細な変化に想いを託し、空気感や光の処理で「物語る」方向性によって作品をまとめたのです(No.2689)
こんな感じ。
私はそれほどアニメをたくさん見ているわけではないので、それらの「転換点」がどの程度妥当なのか(他に比べてそれがどの程度転換点だったのか)は分からないけれど、論自体はなるほどと思えるもの。