k-takahashi's blog

個人雑記用

ビデオゲームに浸透するエージェント技術

 情報処理学会誌2007年3月号(48巻3号)の記事より。著者は、中西英之、Katherine Isbister。

ビデオゲームとエージェント技術の代表的な接点はキャラクタである。本稿の前半ではAI的側面、すなわちキャラクタの動作生成について、後半では心理的側面、すなわちキャラクタのデザインについて述べる。キャラクタの動作生成は、インタラクティブなストーリーの生成と、移動・動作・対話などの行動の制御に分けられる。前半ではそれぞれの既存研究を紹介する。キャラクタのデザインにおいては、キャラクタ間の社会的インタラクションやキャラクタの社会的アイデンティティを上手くデザインする必要がある。後半では、心理学をベースにこれを議論する。

http://fw8.bookpark.ne.jp/cm/ipsj/search_test.asp?flag=6&keyword=IPSJ-MGN480306&mode=PRT


 前半は、ガンパレとか遊んでいる人だと「ふうん」というレベルだろう。いわゆる箱庭系ゲームをベースにしたお話。


 後半は、結構面白かった。

優秀なキャラクタデザイナーはPCすなわちプレイヤの代理としてゲーム世界の中で活躍するエージェントのデザインが及ぼす心理的影響をよく理解しているということである。

として、身体的な代理(Visceral)、認知的な代理(Cognitive)、他のキャラクタとのインタフェース(Social masks)、幻想を満たすなにか(Fantasy)の4つの機能があるとする。Visceralは、プレイヤーの動作をキャラクターの動作に変換する機能で、○ボタンを押すことが「かがむ」や「ジャンプ」や「小キック」などに変換される。Cognitiveは、キャラクターの動作がゲーム世界の問題を解決することで、キックにより敵を排除し先に進めること、などが該当する。Social Masksは、ゲーム世界がキャラクタをどう見ているかをプレイヤーに伝える機能で、狭義のキャラクタ設定というとこれのことだろう。Fantasyは願望充足で、プレイヤーがなりたいと思うようなものに設定されているということ。
 これら4つの機能が上手く満たされているのが、良いキャラクターデザインだ、という主張である。FFあたりだと、Visceralが方向キーやボタン類による移動や戦闘、Cognitiveが戦闘やイベント解決によるストーリー進展、Social masksが狭義のキャラクター設定で、Fantasyが世界を救う英雄ということになるだろうか。インベーダーゲームレベルでも、Social masks以外は、それなりに設定されていることになる。


 面白い指摘だと思ったのが、「社会的装置」の部分で、

たとえば、他人が何かに驚いている様子を見たときに、思わずそれに同調して自分も驚いてしまうことがある。ゲームプレイの状況に反応しているNPCを見せることによって、そのキャラクタの感情をプレイヤに伝え、ゲームのリアリティを高め、そこに引き込むことができると言うことである。これはPCにも当てはまる。ゲーム中で非常に困難な状況に陥っていても、PCが冷静であればプレイヤも冷静さを保つことができ、キャラクタの操作が容易になるであろう。

論文中には書かれていないが、この社会的装置の機能を上述のCognitiveやFantasyとうまくかみ合わせると、高い満足感が得られるということなのかな。


 ゲーム内のエージェントというと、やはりガンパレードマーチが思い浮かぶのだが、どこかに分析とかでていないかな。