k-takahashi's blog

個人雑記用

軍事研究2007年7月号

 巻頭記事は、先日入間基地に配備されたPAC-3の解説「空自ペトリオットPAC-3実戦配備」(石川潤一)。PAC-1/2の実像については、兵器の配備目的(フセインクウェート侵略を対イスラエル闘争とすり替えようとした策を封じる)を満たしたことに触れないのは、ちょっと気の毒かな、と。
 石川氏はPAC-3システムとPAC-3ミサイルを区別して書いている。破片で対応できる対航空機にはPAC-2ミサイルが、直撃が必要な対弾道弾にはPAC-3ミサイルが、それぞれ使用され、PAC-3ミサイルは直撃が必要なのでPAC-2ミサイルよりも小さくその分数で稼ぐようになっていることなどが解説されている。
 イラク戦争では、PAC-3システムは対短距離ミサイル(150キロ以下)相手ではほぼ完璧に機能した実績があるそうだ。が、弾道ミサイル全般となるとそれほど楽観的になることはできない。自衛隊は、海自のイージスBMD(SM-3)とPAC-3の二段構え。一方米軍はというと、ABL(ブースト時)、イージスBMD(ミッド段階下層)、GMD(上層)、THAAD(終端)、PAC-3(終端)の五段構えで、更に追加を研究開発中。加えて、統合構想も進んでいる。日本に米軍ほどの構えが必要なのかというと、まあ、いつ撃ってきてもおかしくない連中が周りに複数いるわけで、検討と統合はやはり必要ということなのだろう。


 面白かったのが報道関係の2つの記事。一つは菊池雅之氏によるもので、先日の町田と静岡の立て籠もり事件を扱ったもの。現場にいるとむしろ情報が分かりにくく、一方TVはライブ映像と録画映像を混ぜてしまうため、これまた混乱のもとになって大変だったようだ。町田の事件の後で「この事件が終わったら、TV付き携帯電話を買おう」と筆者は決心し、静岡の時にはそれなりに有効に使ったらしい。
 もう一つはフォークランド紛争時にブエノスアイレスで取材していた時の回想記事(稲坂硬一)。情報機関から圧力があったのだが、「不慣れなための稚拙な要請」と書かれている。イギリス人クルーには暴力沙汰もあったようだが、それでも敵国に取材を許すというだけでもなかなかな。インビンシブル撃沈の虚報もあったが、これはすぐに怪しまれたとのこと。ちなみに、紛争中にアルゼンチンは「日露戦争の直前の1903年末に巡洋艦2隻を売ってやったじゃないか(だから、自分を支持しろ)」と言ったらしいが、日露戦争の時の恩で言ったらイギリスの方が大きいものなあ。
 規模は全然違うものの、現場が必ずしも全貌を見やすいわけではないことが分かる2つの記事でした。