- 作者: 江畑謙介
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2008/03/27
- メディア: 単行本
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新規情報以外は、おそらく軍関係の記述が大幅に増したのではないかと思います。物流専門誌に載せるには詳細すぎるような内容もかなり含まれています。一方で、物流コストの問題、コンテナ規格の問題、トータル・アセッツ・ビジビリティなどの話では物流業界を意識した内容でもあるようです。常に不測の事態、というか悪意に対応しなくてはならない軍事分野での実例は、リスク・マネジメントやBCPを考える上での参考にもなると思います。
全6章構成で、第1章がイラク戦争を舞台にした米英軍、第2章がアフガンを舞台にしたNATO、第3章が民間委託問題、第4章が世界展開の準備をする米軍、第5章が軍用輸送システム、第6章が将来展望、となっています。
記述は分かりやすく、かつ詳細でかなり勉強になります。地味なところでは、軍用コンテナ(ISOコンテナを使って効率化したはよいものの、軍では「空コンテナを送り返す」という部分がしっかりしていないそうです。で、これは借用料となってしまうとのこと。また、日本ではISOコンテナが列車に積めない問題があるそうです)の解説もありますし、もちろんRF-IDの話もあります。輸送システムの中では、飛行船の開発が進んでいるという話もありました。(一発や二発命中弾を受けてもすぐには墜落しないので、意外に使い勝手がよいかもしれないのだそうです。)
経費が幾ら節約できたみたいな話も多いです。無駄な物流を減らし、急がなくても良い物流は低コストの手段を使い、到着や所在を確実にすることで物資の無駄を省く。とくに現地では物流をするために燃料が必要(その燃料も物流対象)だし、物流量が減れば警備対象も減る(警備にもリソースが必要)なので、効率化は何重にも効いてくるということなんですね。
海自が活躍している洋上補給も、歴史的経緯や、補給時間や内容も解説されています。現在のように多国間協力が必須になると、自分だけで効率化するわけにもいかないという事情も納得できる情報とともに解説されています。
民間委託のところには、もちろん委託時の問題も記されています。責任所在の問題もありますし、経費が本当に適切かという話も出ています。江畑先生はかなり突っ込んだ事例も紹介されています。一方で、カナダ国防省が民間会社の提案をつまみ食いした事例も紹介されており、どこも色々大変そうだというのが伺えます。
なお、帯に「ロジスティクスは後方ではない」と書かれています。これは、現実に最前線まで結んだ全体効率化が図られているという実体を訴えるということと、後方という言葉が「重要ではない」という誤解を生むことへの警鐘の意味とがあるようです。
最新情報中心なので、興味のある方は早めに読んだ方がいいでしょう。これから関連記事を読むときに分かりやすくなりますし、気になったことを確認するのにも使えます。500ページ弱と少々分量がありますが、お薦め。