k-takahashi's blog

個人雑記用

ゲームデザイナーの仕事

 テーマは上述した本とほぼ同じですが、こちらのターゲットはもう少し進んだ人。プロになると決めた人、プロに成り立ての人あたりなのだと思う。

では、なぜそのような当たり前のことが軽んじあられているのか、それはシナリオの理解には一定の訓練や勉強が必要だからです。そして、その訓練や勉強をせずにシナリオを語る人が多いからです。
(中略)
にもかかわらず、「たくさん見ているから」「ただ好きだから」という理由だけで持論を展開する人がいます。そして、問題なのは産業として歴史の浅いゲーム業界には、作り手側にもそう言う人が多いということです。(はじめに vi より)

 ゲームデザイン以外の部門の方、ときには当のゲームデザイナーですら、基本的なゲームデザインの知識が欠落していることです。おかげで、とんちんかんな修正要望が提出されることになります。(はじめに vii より)

 著者の基本的な問題意識がこれです。なので、クリエイティビティとか芸術論とかを期待すると肩すかしにあいます。というか、本書はゲームの本である以前にまずビジネス書なのです。ビジネスとしてのゲーム制作、そのために必要なビジネスマンとしての心得が書かれています。ぶっちゃけて言えば、金のこと、誰が決定権を持つのか、組織内で仕事をすることの意味、をきちんと考えろということ。そして、良いゲームを作りたければこそ、ビジネスをきちんと考えろ、と言っています。

 ビジネスシーンにおいて、わかりにくい文章を書くことはプロジェクトに対し、金銭的な損害を発生させることを意味するのです。日常生活のように読み手に対して不快な思いをさせると言うだけではないのです。この本を読んでいる人は「金銭的な損害」と表現すると、「ゲームの面白さではなく金の話か」と思うかもしれません。
 しかし、すでにお話ししているとおり、ゲーム制作はビジネスです。お金(予算)がなければ、つまらないゲームが出来上がる可能性が高くなります。つまり、分かりにくい文章を書くことが、まわりまわってゲームの質を下げることになるのです。(p.125)

 コンピュータゲームに関心のある社会人の人も読むと良いです。ゲーム制作についての色々な面白い話も聞けますし、ちょっとは自分の仕事スタイルの反省にもなるのではないかと。


 以下は、いくつか面白かったところを拾い抜き。

さくまあきら氏インタビュー

 さくま氏がプロジェクトメンバーに配布しているという「お仕事マニュアル」が公開されている(p.76)。
氏が経験的に積み上げてきたノウハウをまとめたもので、普通にソフトウェア開発プロジェクトに関わっている人なら応用できます。意思決定と情報共有と言えばそれまでなんですが、まとめかたが面白い。必見。

山倉千賀子氏インタビュー

 いきなり「クライアントさま」という発言が出てきて雰囲気一辺。インタビュー意図そのものなんですが、ビジネス視点バリバリです。
あとは、スケジュール管理とかの関係で、版権ものゲームのビジュアルパーツは仕様書ができる前に着手できる、というのは面白い発言だった。

シナリオ構造

 本書ではゲームシナリオ構造を6つのパターンに分けている。「一本道」「分岐」「並列」「樹木」「マルチ」「モザイク」である。
「分岐」は一端分かれたらそのまま分かれたまま。「並列」は一端分かれた後合流する。「樹木」はちょっと紛らわしい言い方で、アルゴリズムでいうところのtreeではなく、分岐と合流を繰り返すもの。
「マルチ」はイベント発生の順序関係を想定しないタイプ。
「モザイク」は、パラメータでイベント発生をコントロールするタイプ(ときメモとかガンパレ)。


 若干用語の使い方が適切でないような印象も受けたが、分類自体はこれでいいように思う。
それぞれどんな苦労があるか(どんな能力がライターに求められるか)が書かれている。

4−3章 システムデザインのテクニック

 ここは、単純にTips集として、チェックリストとして面白い。「アイコンはやくにたたない」「繰り返して起こるイベントは短く」(宿屋が街の入り口近くにある理由)、「憶えたコマンドは、すぐに使えるようにする」「変化があったら知らせる」などなど。
特に目新しい話ではないが、それ本書が徹底的に「当然やっているべきこと」にこだわって書かれているから当然。

企画

 本書には何度も「企画とは何か」「どうやって企画書を書くのか」「どうやって企画を認めさせるか」という話が出てくる。逆に言えば、著者の目から見て、そこが早急に改善しないとまずく、またすぐに改善可能なところなのだろう。で、例によって身も蓋も無い話が続きます。(若者が自分の企画を通すなんて、普通無理、とか)

 企画プレゼンのときに「デザイナー的アプローチ」と「プロデューサー的アプローチ」を使い分ける話とか、一般企業で企画プレゼンするときにも流用できる発想。(デザイナーのところを研究者とか技術者にすればよい)