k-takahashi's blog

個人雑記用

ニュートン2010年2月号

Newton (ニュートン) 2010年 02月号 [雑誌]

Newton (ニュートン) 2010年 02月号 [雑誌]

 特集は「無の物理学」。真空とか特異点とかの解説記事。不確定性原理や場の概念の説明を行った上で、なぜ紐理論が出てきたかも簡単に解説される。素粒子を点だと捉えると、大きさがゼロになってしまい、これがまずい。そこで、ゼロ(無)を排除するために考え出したのが大きさゼロではなく非常に小さい紐だという説明。


 ペンギンの記事(「ペンギンは摩訶不思議」)も面白かった。
ペンギンの歩行能力が高いこと、実は首が長いこと、短く見える脚が実際にはしゃがんだような骨格であり短くないこと、エンペラーペンギンの潜水深度が500m以上にもなること、など。


 「氷の上は、なぜ滑りやすいのか」も面白い記事。
確かに子供の頃に「圧力がかかると氷が溶けて水となり、これが潤滑の役割を果たす」と読んだことがある。ところが測定してみると、圧力による温度上昇は数度程度しかなく、これでは氷点下20度でも氷が滑ることが説明できない。
次の説が摩擦説。氷が摩擦で溶けて水になりそれが潤滑の役割を果たすというもの。ところがこれにも説明できない実験結果があるのだそうだ。非常にゆっくり動かしたときには摩擦熱は発生しないが、それでも滑りやすくなるというもの。
そして、疑似液体層潤滑説というのがある。これは、固体と液体の中間の性質をもつ層ができているというもの。ただしこれも粘性が大きくなるはずなので、氷の摩擦の小ささを説明できないそうだ。
 インタビューを受けた対馬勝年教授が唱えているのが氷の結晶の特異性を元にした凝着説。物体表面の凸部同士が凝着して摩擦になるというのが凝着説。氷の場合、結晶の方向により圧縮に強く、ずれに弱いという特性があるので、凝着が外れやすい。それが摩擦の小さな理由なのだそうだ。
 この理論に基づくと、結晶の方向によって摩擦が変わってくることになる。対馬教授の実験ではそれを裏付ける結果も得られており、さらにその理論に基づいたスケートリンクでは記録更新が相次いだという。(が、コストがかかりすぎるためこのときだけだったらしい)
 いずれにせよ、いろいろな理論があり結論は出ていないのだそうだ。


 スーパーコンピュータの解説記事もあった。強力は、東工大の松岡聡教授と国立天文台の牧野淳一郎教授。仕分けの話をおくびにも出さず、高速計算を支える基本的な考え方を紹介する。また、「大量の計算」を捌く方法には、高速計算機以外にも分散計算の手法もあることもきちんと解説している。
 でも最後はきちんと「スーパーコンピューターの進化が「もう十分」となるのは、当分先になりそうだ」と、しっかり。


 あとは小ネタ2つ。


 「味覚刺激」だけでなく、「食事への期待感」でも血糖値が低くなる現象がラットで確認できた。甘いという刺激を受けたときや、美味しそうな食事が食べられそうだと期待すると、オレキシンというホルモンの分泌が増加したのだそうだ。オレキシンは血糖値を抑えたり、筋肉への糖分の吸収を促したりする効果が確認されている。
 言ってみれば、「美味しそうだ」と思うと食用が沸いてくることの理由付けの一つとなるわけ。


 ナスカの地上絵をどうやって描いたかについては諸説あり、「下絵を描いておいて、それをロープかなにかを使って拡大する」というのがよく言われる。私もそうだと思っていた。
 ところが、現地の農民は20m程度の大きさの絵なら、15分ほどで道具も無しに描いてしまうのだそうだ。だとすると特にその技量の高い農民なら100m級の絵も意外とあっさり描けてしまうのかもしれない。意外だが、ありえるな。