k-takahashi's blog

個人雑記用

ニュートン 2011年10月号

Newton (ニュートン) 2011年 10月号 [雑誌]

Newton (ニュートン) 2011年 10月号 [雑誌]

太陽

特集は「太陽」。構造説明と、活動周期の解説、太陽活動の地球への影響など。
Part3の地球への影響が面白かった。太陽の明るさ自体は極大期と極小期とで0.1%程度しか変化しないのだが、近赤外線は1〜10%、遠赤外線は10%程度変化するそれぞれ、高度50キロ付近、高度100キロ付近(熱圏)で吸収されるので、そこへの影響は大きい。熱圏の温度は500度ほど変化するそうだ。但し、その気象への影響ははっきりしていない。
太陽活動の気象への影響の仮説の一つにこんなものがあるそうだ。

超新星爆発がおきると、陽子や電子などの電気を帯びた粒子が超高速で宇宙に飛び出す。宇宙空間には、こうして生じた超高速の粒子がつねにとびまかっている。この粒子を「銀河宇宙線」という。
銀河宇宙線は、地球にもつねに降り注いでいる。しかし近年、地球に降り注ぐ銀河宇宙線の量が、太陽活動の変化と共に大きく変わることが分かってきた。太陽活動極大期には宇宙線の量が減り、極小期には増えるのだ。そして、宇宙線の量が変化すると、地球の気候が変わるかもしれない。(p.48)

宇宙線が大気を通ると、霧箱の原理で雲が増え、太陽光の反射が増え、気温が下がる。というモデルである。まだ仮説の段階らしいが、へえ、と思う仮説だった。


そして、そういった太陽の観測が続いているというのが最後に紹介されていた。そういえば、先月末(本誌が出た後)、JAXAが太陽についてこんな発表をしている

「ひので」の観測成果
〜上昇し始めた太陽活動と極域磁場の反転〜

JAXA|「ひので」の観測成果〜上昇し始めた太陽活動と極域磁場の反転〜

注目集めているな、と。

科学的に正しいとは

原発事故関係の報道や反応をみて必要を痛感したのか『科学的に正しいってどういう意味?』という記事が載っていた。
『実験の「正しさ」は条件付き』とか、『すべての科学には必ず「前提」がある』とか、『論理が通っているかを考え、前提を疑おう』とか、丁寧な解説。実験できない学問についても触れられている。
「科学的な正しさ」の原則、という表があったので引用。

実験や観察で証明できるか?
別の研究者によって再現されているか?
既存の理論と矛盾していないか?
結論までの道筋に論理的な矛盾はないか?
すぐに思いつく反例はないか?
仮説や仮定はまちがっていないか?
(p.109)

地震の予知は可能か

今回の地震に前兆はあったか、という記事も面白かった。

  • 過去10年間の地震活動のプロット(p.110)、本震の一ヶ月前に観測された震源の移動(p.112)。確かに震源の移動は見られるが、断層の破壊が急加速して本震につながったようには見えない。
  • GPSデータから得られた東西圧縮ペースの減少グラフ(p.113)。プレート境界面の滑りが現れた可能性はあるが、この変化の検出自体がはじめで、まだ分からない。
  • 傾斜計のデータ(p.114)。今回は観測可能なプレスリップは発生していなかった。
  • GPS衛星が捉えた電子数の異常(p.115)。1時間前から震源域上空の電子数増加を観測していたが、これは地震発生後に電子数が減少したと解釈することもでき、まだまだ議論が必要。

今回捉えた色々な「現象」をベースに研究が続けられるはず。それらは地震のメカニズムの解明につながるだろうし、ものによっては予知に役立つようになるかもしれない。

納豆と光学異性体

ネタとして面白かったのが、納豆の話。(pp.120-121)
納豆の粘りけの正体はポリグルタミン酸(PGA)というグルタミンが1万個程度つながった物質。納豆菌は人口密度が高まると、将来の食糧不足に備えてPGAを作り始め、栄養不足が起こるとPGAを分解してグルタミン酸を取り込む。ここまではいい。
ここで納豆菌は、いわゆる光学異性体のL型のグルタミン酸をわざわざD型に変換してからPGAに組み上げ、そして使うときに再びL型に変換している。他の細菌に使われないための工夫なのだそうだ。
よくSF等では光学異性体の食べ物が栄養にならずに、という設定があるが、納豆菌、もしくは納豆遺伝子を組み込んだ納豆人なら、そういうのでも食べられるのかもしれない。と無茶なことを連想した。