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若き金王朝三代目がもてあそぶ実用核爆弾(黒井文太郎)
最近の北朝鮮の核実験、ミサイル実験についての分析記事。
1月24日の国防委員会の声明が
核もロケットもアメリカを狙うもの、と公言した(p.30)
点を、予想以上に踏み込んだ表現と分析したり、北朝鮮の行動パターンを
今回も含めてこれまで三回の核実験は、いずれも衛星打ち上げ(弾道ミサイル発射)→制裁→核実験という流れを踏んでいる。まずはロケットを故意に打ち上げ、国連安保理の制裁決議を誘引し、その反発というかたちで核実験が行われていた。
(中略)
もちろん国際社会には通用しない屁理屈だが、それでも同盟国である中国が、国連安保理で北朝鮮を擁護できればそれでいい。(pp.34-35)
と解説したりしている。
人民解放軍海軍潜水艦部隊の脅威(田中三郎)
中国海軍の軍拡が引き金となって発生している東アジアの潜水艦建艦競争についての記事。
三亜地区の人民解放軍の基地の解説がある。
また、それに対抗する各国の動向の分析もあり、とくにベトナムについては、
ベトナム海軍の六隻のキロ級636は、亜龍湾を封鎖するには充分な戦力となる。さらにベトナム空軍のSu-30MKVは、亜龍湾内に対比した中国空母を空中発射巡航ミサイルにより攻撃が可能になる。また湾内を出ればベトナムのキロ級636潜水艦の監視下に置かれる。ベトナムは、キロ級636潜水艦を導入した後、先進的なこの3M-54E型ミサイルを新たに導入するのは必然である。(p.49)
との記述。
記事中にはちょっとだけ出てくるオーストラリアについては、先日 http://news.nna.jp/free/news/20130312aud002A.html などという報道もあった。
中共の軍拡の余波で、という話は2010年の4月号にも載っていた。あの記事では、ベトナムのことはあまり書かれておらず、主に台湾が危ないという感じだったが、もはや東アジア全域への脅威というレベルになっているようだ。
トップクラスに躍り出た中国戦闘機の発達史(青木謙知)
中国の国産戦闘機開発の歴史とプロセスの解説。
基盤がない(なくなった)ところから、友好国(米ソ)の援助で練習機から、というあたりは日本と似たような経緯で、徐々に国産技術を涵養してきたの似ている。
JH-7が独自設計独自開発による最初の戦闘機でこれが1988年初飛行。
そして、日本がF-2を開発していた頃に、J-10を開発。この時点で、「中国は第4・5世代戦闘機の独自開発にこぎ着けることができ、日本は実現できなかった。」ことになり、日中の格差が明確になったとする。
先月号には、竹内修氏による中国戦闘機の記事があった。
空自F-15の将来改良計画(小林春彦)
中露の脅威に対抗する必要がある空自だが、F-35だけで全てがまかなえるわけではなく、現行主力機のF-15も改修が必要。その経緯や今後についての記事。
基本的にはF-35を補完する必要があるので、空対空ミサイルの性能向上、サイレントオペレーション能力の付与、RCS低減、が求められる。
IRST(赤外線捜索追尾装置)、AESA(アクティブ電子走査アレイ)レーダー、などがそれで、米空軍も改修を予定していることから、ボーイングの計画にも入っているそうだ。
中国とロシアのふしだらな軍事関係(小泉悠)
やや品のないタイトルだが、二次大戦後の両国の関係をざっくりまとめている。
1969年の中共によるダマンスキー島侵攻事件など色々あったが、軍事交流は止まったり続いたりと。
最近だと、
ウクライナ自身はソ連崩壊によって中国から遠く離れた黒海の中小国となったため、中国の軍事力の動向にはさほど敏感になる必要が無い。このため、ソ連から受け継いだ機微技術を割に簡単に中国に売り渡してしまう傾向がある。(p.102)
2001年、核弾頭を装備可能なKh-55SM空中発射巡航ミサイルが中国に六基密輸されていたという(p.103)
ウクライナについては、「ロシア海軍試験飛行訓練センターニトカの技術資料を違法に中国に売り渡した」という疑惑もあった。(去年の秋の記事)
覚悟して『国家機密保護法』を制定すべし(橋本力)
1月号に続いての10の提言の後半。
「機密に関する情報保全の枠組みから"民間"が外れている」
「外国の政府が日本からほしがっているものは何かという点を徹底的に調査すれば」
というあたりから始めないといけない。
空に宇宙に海中に!最新燃料電池技術(野木恵一)
燃料電池技術の歴史と現状。19世紀のクリスチャン・フリードリヒ・シェーンバインの発明の紹介から始まる。そして、20世紀になって実用化した最初の応用分野は当時の宇宙開発。ジェミニ用にGE社のイオン交換膜形燃料電池を採用(これは、「気分屋」と言われて安定しなくて大変だったそうだ)、アポロ用にはP&Wのアルカリ形が採用されている。
アポロ用燃料電池と言えば、例の13号の事故にも関わったあれである。シャトル用もP&W社のものだが、シャトル時代になっても「気分屋」の評判は残っていたそうだ。
そして現代。潜水艦用というのは誰でも思いつくが、米陸軍は戦車への利用も検討している。補助動力を燃料電池に置き換えて効率化が図れるほか、待機や待ち伏せ中には無音で無駄がないという長所が生かせることになる。
ナチスを打倒したソ連戦車開発の秘密(宮園道明)
縦深作戦の理論は誕生当時、ソ連の軍事産業の実力よりはるかに進んでいた。このため、この理論は軍事産業の近代化に拍車をかけることとなった。(p.222)
オリョルの戦闘が終わった際、防御側の放談がどのように命中したか、あるいはソ連の戦車がいかに損害を与えたかについての多くのデータが収集された。口径、射距離および入射角がグループ化され体系的に分析された。
(中略)
これらのデータは戦争の終結に向けてソ連のせんしゃの輪郭(シルエット)および構造方式の決定のために使用された。即ち、従来の戦車と異なる新しい戦車の開発手法を手に入れることになったのである。(p.228)