k-takahashi's blog

個人雑記用

クモのイト

 

クモのイト

クモのイト

 

 イトは「糸」と「意図」の掛詞になっていて、著者の専門は「動物行動学」。網を張るという(張らないクモもいる)独特の行動と、その行動の目的といったところを中心にクモの生態を紹介してくれる。

研究室でクモを飼っていると、よいことがあります。まわりの人が、あそこの研究室にはクモがいるから行きたくないわ、と思ってくれるのです。人が来なければ仕事も降ってきません。ほら、やっぱりクモは守り神です(No.28)

 ということで、どうにも嫌われることの多いクモ(著者の勤務先は女子大)だけれど、色々と面白い。

 

宇宙に行ったクモというとスカイラボの実験が有名で、無事に網を張ったことはよく知られているが、宇宙で張られた網は地上のものよりも上下の対象性が高かったというのは知らなかった。(地上では下が細かくなる)。これが重力の影響がないので対象にしたのか、重力がなくて上下が分からなかったから対象になってしまったのかは不明だそうだ。

 

あとは、クモが糸を使って飛ぶ(バルーニング)というのは知っていたが、あれが風を使うというだけでなく、静電気による反発(地面も糸もマイナス)を利用しているというのも知らなかった。

更にバルーニングしたクモが水上に落ちても、実は沈まずに、アメンボのように水上を移動できるのだとか。
こうしたことがあるので、新島に最初に降り立つのがクモであることも珍しくないとか(ただし、餌がいないので・・・)

 

クモの網(住まないので巣とは区別する)を張るのにはそれなりの資源と時間が必要なので、効率の悪い網は張りたくない。そうするとクモは思ったよりも高度な状況判断を行っていることが分かる。エサを多く捕まえた翌日には網が大きくなったり、天敵を察知すると小さくしたりする。

 

害虫を食べることでクモを益虫とみる考え方があるが、どのくらいの量かというと、クモは陸上で最も多い捕食者で、年間4億トン~8億トンのエサを食べている。そのほとんどが昆虫だが、昆虫の量は13億トンと見積もられているので3割~6割をクモが食べていることになる。この影響は大きい。

もう一つ面白いのが家の中のクモ。

家の中にクモがたくさんいる証拠に、例えば忙しくて掃除の手が行き届かなくなるとそこかしこに「クモの巣が張った」状態が現れます。クモは家の中で二番目に多い虫で、巣を張らないときでも、あとに糸を残しながら歩きます。ですから、人の手や掃除機が届きにくいような、家具と家具の間の隙間や照明器具と天井の間の空間が、いつのまにか糸でいっぱいになっているのは、ちっとも不思議ではありません。

こうなっているのを見つけたときでも「家が汚れている」といって慌てて糸を払う必要はないのです。というのは、クモの糸にはどうやら細菌の繁殖を抑える効果があるらしいことが最近分かってきたからです。しかも、糸がたくさんになればなるほど効果が大きくなります。クモが家の中にいれば、掃除がしにくいようなところでも、細菌が増えないので衛生的です。(No.1843)