k-takahashi's blog

個人雑記用

脳トレに効果認められず

昨日こんな記事が配信されていた。

数年来の「脳ブーム」に対し、「脳科学はそう簡単じゃない」と訴える研究者が相次いでいる。「すぐ役立つ」ばかりを期待する世間に、「応用を安易に語りたがらない科学」が理解を求めている。
 大阪大学の藤田一郎教授は、視覚と脳の関係を探る基礎研究者。昨年出した『脳ブームの迷信』(飛鳥新社)で、脳にまつわる様々な風説の横行を嘆き、一例として「脳トレ」を検証した。
 2005年の発売から、09年9月末までに世界で正続2作が3218万本売れたこのゲームソフトは、正式名称が「東北大学未来科学技術共同研究センター川島隆太教授監修 脳を鍛える大人のDSトレーニング」。「音読や簡単な計算で脳の血流が増す」という川島教授の理論に基づいて任天堂が開発した。

http://book.asahi.com/clip/TKY201004200165.html

で、この記事中の川島教授の発言がちょっと酷くて、

認知症治療は結果がすべて。複雑系の極みである人間相手の研究に、実験室の原理原則を当てはめるのか。どこが効くかの峻別(しゅんべつ)は調べたい人に任せます。ただ、それじゃ科学は社会から孤立する」

http://book.asahi.com/clip/TKY201004200165.html

本当に効果があるのかという問題をはぐらかしている。


 ところが、今日、脳トレの効果を否定する調査結果が発表された。

 コンピューターを利用した脳トレーニング(脳トレ)は、健康な人の思考力や記憶などの認知機能を高める効果は期待できないことが、ロンドン大学などの1万人以上を対象にした実験で分かった。

http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20100421-OYT1T00518.htm


もうちょっと詳しい情報はないかな、と思ったら、すでにすばらしい紹介記事が出ていました。

平たくいえば「頭の良し悪し」の判定も可能なスコアリング・システムを用いて「脳トレ」ゲームの効果があったかどうかを判定したとのことです。にもかかわらず「脳トレ」でこれらのスコアが向上しなかったということは、極論すると「今回調査した範囲においては『脳トレ』には頭を良くする効果はない」ということを意味しています。

http://www.mumumu.org/~viking/blog-wp/?p=3778

原論文にあたった解説記事で、今回の発表については、このエントリーを読めば充分でしょう。加えて、次に何をするべきかもきちんと書かれている。

1. OwenらによってNatureに掲載された論文は、「『脳トレ』には少なくとも4種類の代表的な認知機能を向上させる効果はない」と大規模疫学調査の結果をもとに主張している
2. 一方、Owenらの研究は青年・壮年層の健常者のみを対象にしており、高齢者のdementia(「認知症」と呼称される認知機能障害)が改善するかどうかという疑問については触れておらず、高齢者を対象とした同様の大規模調査が待たれる
3. 「トレーニングで頭が良くなるかどうか」という疑問については2年前に別の手法で可能だと主張する論文が出ており、「脳トレ」の議論とは別にさらなる研究が望まれる

http://www.mumumu.org/~viking/blog-wp/?p=3778


 これで、紹介自体は済んでいるのですが、関連記事を探していて見つけたAPの記事にちょっと面白い指摘があった。今回の発表を受けての、専門家のコメントです。

Instead of playing brain games, Kramer said people would be better off getting some exercise. He said physical activity can spark new connections between neurons and produce new brain cells. "Fitness changes the building blocks of the brain's structure," he said.
Still, Kramer said some brain training games worked better than others. He said some games made by Posit Science had shown modest benefits, including improved memory in older people.

http://www.google.com/hostednews/ap/article/ALeqM5hVC61IGRUtnob-Il-rCE4VMu19nwD9F6UG600

(適当訳:脳トレするより運動した方が効果はあるよ。ただ、ゲームの中には多少効果が認められるものもあるけど。(イリノイ大学のArt Kramer教授))

If people are enjoying the brain games, Adey said they probably aren't being challenged and might as well be playing a regular video game.
He said people should consider learning a new language or sport if they really wanted to improve their brain power. "To stimulate the intellect, you need a real challenge," Adey said, adding computer games were not an easy shortcut. "Getting smart is hard work."

http://www.google.com/hostednews/ap/article/ALeqM5hVC61IGRUtnob-Il-rCE4VMu19nwD9F6UG600

(適当訳:脳トレでは挑戦しているとは言えないんだよ。脳を鍛えたければ語学学習やスポーツをやるべきだね。(ロンドンキングスカレッジのPhilip Adey教授))

 数年前にはやった「ビリーズ・ブートキャンプ」も同じような結論だった。苦労すれば良い的な発想は不合理だけれど、楽できないところで楽しようとしても駄目なんですね。