k-takahashi's blog

個人雑記用

軍事研究  2011年04月号

軍事研究 2011年 04月号 [雑誌]

軍事研究 2011年 04月号 [雑誌]

 F-35について、巻頭カラーに生産ラインの写真、記事が一本。
中共・対中関係の記事が5本。


 『中国の最新ステルスJ-20と戦闘機開発のあゆみ』(大塚好古)はソ連機コピーから始まった中共の戦闘機開発史の概要と、J-20戦闘機の推測性能などを記した記事。
戦闘攻撃機なのではないかとまとめており、

だが攻撃機としての性格が強いとはいえ、第四世代機をはるかに上回るステルス性と、優秀な性能を持つはずのレーダーを装備するJ‐20は、有視界外戦闘能力は第四世代機を大きく上回るであろう。第四世代機に対して優位に空対空戦闘を行うことができる恐るべき戦闘機になることは確かだろう。また多彩な対地及び対艦攻撃兵器の運用能力を持つ本機は、敵深部に侵攻攻撃を行うステルス攻撃機としても有効に使用できる能力も持つと思われる。(p.53)


『中国「網絡警察」と「網軍」』(黒井文太郎)は、中共のネット統制についての記事。実際にサーバをダウンさせたりした事例を紹介している。
『中国軍の衛星攻撃型知能衛星」(鈴木基也)は、中共が準備している宇宙戦争手段についての記事。米国の軍事衛星(GPSを含む)を破壊・無力化するために物理的攻撃や接近しての妨害電波発信などの、実験・準備状況を紹介している。


『大手CIA型民間軍事会社の成長戦略』(阿部琢磨)は、情報処理関係のPMSCの紹介。CIA型というのは、情報処理関係のこと。
ブーズ・アレン・ハミルトン社(Booz Allen Hamilton)、マン・テック社(ManTech)、CACl社、キネティック社(QinetiQ)、インクテル社(In-Q-TEL)、などを例としてあげている。
業務内容は、情報収集・分析・アドバイスシステム開発などで、アメリカの情報系会社と思うと大体納得できるものが多い。
ただ、ベンチャー投資までは分かるが、多角化経営だの会社買収だの買った会社の転売だのというところを見ると、別の意味で凄いな、と思う。途上国なら違法な蓄財行為なんだが、それがルールに則って行われ、それなりに結果を出しており、そしてそれを外国人である私が普通に知ることができるというところも。
ちなみに、Qという文字が社名に入っている会社があるが、どちらも007の「Q」にちなんで付けたものだそうです。(当然、開発系)


『軍用コンピュータ 進むオーブン。アーキテクチャ化』(井上孝司)は、最近の軍用コンピュータ事情の紹介記事。防塵・対振動・冷却などの環境が民生品とは異なるという話や、COTS化の際にはパーツ入手の考慮が必要だ、などの話。なお、SIの難易度は、インタフェースの標準化が民間用ほどには進んでいないため、軍用の方が厳しいらしい。


キューバ危機(後)』(橋本力)氏は、ソ連側から見たキューバ危機の認識といった内容の記事。
ソ連は米国より核戦力で劣っているとソ連は思っていた、危機の時点でキューバには戦術核が配備済みだった、ソ連は核を使うつもりだった、などといったことが書かれている。

アメリカの政策決定者や軍部は、ソ連が戦闘で戦術核を使用する意図があるとは(またキューバに戦術核が存在するとは)思ってもみなかったが、ソ連の政策決定者や軍部は、実戦で戦術核を使用することに対して跨跨していなかった。つまり、アメリカを含む西側諸国にとって核兵器は抑止力であったのに対し、ソ連の戦略にとって核兵器は戦闘力の一部であった。
現在のところ、ソ連が戦術核を戦闘で使用し、その結果、アメリカが核兵器によって報復し、全面的な核戦争にエスカレートすることについて誰かが考慮したという証拠は見つかっていない。(p.228)

キューバ危機は「核戦争の瀬戸際」と言われているが、我々の通常の認識よりももっと瀬戸際度が高かったのかもしれない。