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ソーシャルゲーム業界最新事情 〜激変世界のスナップショット

ソーシャルゲーム業界最新事情

ソーシャルゲーム業界最新事情

 我らが徳岡正肇先生による、最新情報本。帯にも「今、最も旬な業界」と書いてある。読むならとっとと読んだ方がいいよ、という一冊。


第一部(約50ページ)が「ソーシャルゲーム概説」。ソーシャルゲームとは、その特徴は何か、今後どうなるのか、を徳岡さんの視点からまとめてある。
従来のゲームサイトが「特定のゲームに興味を持つ人が集まっていた」のに対して、「SNSコミュニティが前提で、そこに対してゲームを提供する」というのがソーシャルゲームである、という言い方は腑に落ちる。
そして、ソーシャルゲームの特徴を7点挙げている。(pp.9-13)

歴史的な経緯については、ブラウザゲームカジュアルゲームというジャンルがあり、それがSNSをプラットフォームに移すことでソーシャルゲームが誕生。これに携帯電話ゲームというジャンルが融合して、モバイル・ソーシャルという今後もっとも大きくなるであろうジャンルにつながるという図を書いている。


ゲームアーキテクチャの話に関心がある人にとっては非同期性の話が面白いと思う。
ゲーム内時間とユーザがゲームに関わっている時間とが同じかという話で、一人用のゲームならユーザが遊びたいときだけゲームを遊び、その間ゲーム内では時間が止まっていることになる。(たまごっち、どこでも一緒からラブプラスに至る流れというのもあるが、本書では省略されている。)
これが複数人が遊ぶことになると、話がややこしくなってくる。人と一緒に遊ぶ必要がある(あるいは、そうすると有利になる)となれば、遊ぶタイミングを合わせようということになるわけだ。このとき、それができる人とできない人との間の格差をどうするのか、というのが一つの課題。(MMOで非常に顕著に現れた問題)
ここで、非カジュアルゲームにおける同期・非同期問題(メールプレイやTRPG)にも触れつつ、格差をどの程度許容するかで、複数のゲーム運営方針があるという解説をしている。


他にもソーシャルゲームのUIが非ゲームアプリのUIに影響する話(p.45)とか、多人数が参加するゲームで個人が埋没しないようにするために、範囲をフレンドに限ることで見かけ上の順位をあげる工夫(p.48)とかも面白い。


もちろんマネタイズの話も書かれている。一つ面白いと思ったのがkweditの話。kweditはオンライン支払いサービスの一つだが、なんと返済義務がない。クレジット決済のできないユーザーでも気軽に使えるようにということで始まったサービス。当然払わない人が多く出ることが予想されたが、どうせ有料課金ユーザは一部なんだから、多少支払い率が悪くたっていいのではないか、という発想で作られたサービスである。
これに対して、徳岡氏は、

Kweditの主要利用者層は、しばしば年少者であり、高確率で返金要求訴訟が発生するリスクグループと認識されています。(海外でも日本のモバイルソーシャルゲーム同様の高額課金問題は発生しているのです)運営側としては、CS部門の経費を抑制するという意味においてもKweditは魅力的であるという意見が見られます。(pp.52-53)

と書いており、業界の社会対策の面を指摘している。なるほどなあ。


第二部は業界インタビュー。12社にインタビューを行っており、全部で約150ページ。分量的にはこちらがメインになる。本の帯には「どんな人材を求めているのか」と書かれているが、この質問は当然「弊社はこういう方向を目指すので、こういう人が欲しいです」という回答を期待してのもの。
方針などは各社各様ながら、ラットイヤーどこの騒ぎではないこの業界。来年にはきっと全然違うことを言っている会社が少なくないだろう。そういう意味で興味深い記事。実際に関わっている人にとっては笑い事ではない問題ばかりなのだろうが、門外漢の人は、来年クスクス笑うためのネタ仕込みと思って、是非ご一読を。